東方555


 

 月夜の広野。
 数人の男が走っている。その先には、一体の妖怪の影があった。
 男の一人が鎖つきの分銅を投げる。それは妖怪の足に絡みつき、それは転倒した。
 男たちはそれにどっと群がると、手にした得物を一斉に振り下ろし、その妖怪を仕留めた。
 この妖怪は、人里で騒ぎを起こして数人を負傷させ、そのうち一人は間もなく死亡していた。そのため、里で妖怪退治を生業としている者たちがその妖怪を捜索し、今、仕留めたのだった。
 「息の根は止まった」
 「しかし生き返るかもしれない。焼こう」
 「わかった」
 妖怪の死骸に油が撒かれ、火がつけられた。
 妖怪は燃え上がり、周囲が明るくなる。
 と、また一体の異形の姿が男たちの前に照らし出された。
 「!!」
 「いつの間に!!」
 男たちは身構える。
 その異形は、男たちの見たことのない妖怪だった。全身は灰色一色で、複雑で生々しい生物の特徴を模した人型。山中で育った彼らは見たことがなかったが、それは海老類のものに似ていた。
 その異形は右手を構えた。すると、その手に針のような細身の剣が出現する。
 「やる気か!」
 男たちの一人が呪文を唱え、札を放った。札はみるみる猛犬に姿を変え、異形に襲いかかる。
 しかしその異形は剣を一閃、犬を両断した。犬は紙切れとなって舞い散る。
 すっ、と異形が動いた。
 「ぎゃあ!」
 一人が剣で胸を貫かれた。
 「あ・・・あ・・・あ・・・」
 胸――正確に心臓――を刺し貫かれた男はその場に崩おれる。
 「は、速い!」
 残った男たちが身構える、しかし、
 ピュン!ピュンピュン!!
 「こっ」
 「けっ」
 「か」
 「き」
 細身の剣に全員一瞬にして心臓を刺し貫かれ、その場に倒れた。
 “・・・・・・・・・・”
 その異形は、全員を殺したあともなお、しばらくその場に立って、死体となった男たちを見下ろしていた。
 するとやがて――奇怪なことに、男たちの身体がぴくぴくと動き出した。
 そして・・・ついにむくりと起き上がった。
 蘇生したのだ。
 “あら、全員・・・珍しい。それとも、「ここ」の人間はそういう体質の者が多いのかしら”
 異形は声を発した。女性の声だった。
 “だとすると、手間が省けるのだけど・・・・うふふふふふ”
 立ち上がり、自分でも信じられないように自らの身体を見る男たちを眺めながら、異形のものは妖しく笑った。

 

 「なに、また帰ってこなかったのか?」
 上白沢慧音は眉をひそめた。
 数日後、人間の里。
 「・・・はい」
 自警団の中で対妖怪のために組まれている班の若者がうなだれた。
 「これで十三人になります・・・」
 「いくら何でも・・・あの妖怪の仕業なのか?」
 「いえ・・・」
 若者は首を振って、「昨日日中の探索で、ごく最近妖怪を焼いた形跡が見つかりました。あの妖怪はおそらく仕留められたものと思われます」
 「新たなる妖怪が・・・しかし、十三人も屠るようなやつなど・・・」
 慧音は顔をしかめて考え込んだ。そのような強力な妖怪が、自分のテリトリー外をうろついて人を殺すなど、あまり考えられない。
 「・・・その、遺体は見つかったのか」
 と問うと、
 「いえ・・・」
 若者は首を振って、「まったく・・・ただ」
 「ただ?」
 「これも昨日昼の捜索でですが・・・何者かが争った形跡があって、その周囲に灰が撒き散らされていたそうです。ただ、何かを焼いた形跡はなかったと」
 「灰・・・」
 慧音はため息をついた。彼女の脳裏にそれに類する知識・記憶はない。とすると、なんらかの新たな妖怪がこの幻想郷に出現したのか。そして、それは、この幻想郷のルールに従わない凶悪なものである可能性が高い。
 「わかった」
 慧音はうなずいて、
 「君たちだけでは手に余る相手のようだ。しばらくは捜索に出るのは控えたほうがいい」
 と言った。
 「私が知り合いのところに行って、力を貸してもらえるように頼んでくる」
 「それは・・・竹林のあの方ですか?」
 と若者はぱあっと表情を変えて、「あの方なら心強いです!」
 「・・・・・・・」
 この若者、彼女のファンか・・・と慧音は苦笑いし、
 「それではそう伝えてくれ。私はさっそく出かけてくる」
 と立ち上がった。

 

 (ここは・・・・・・・・)
 「その男」は辺りを見回した。
 そこは、落葉した巨大な桜の木が立ち、枯れた彼岸花の群れがそこかしこに広がる、無縁仏の墓地だった。
 (山の中に・・・こんなところが・・・)
 彼の足元に灰がぱらぱらと落ちる。
 彼は、死ぬつもりだった。
 彼は「人間」として生きていこうとしたが、世の中の厳しさにはじかれ、また、彼の寿命も尽きようとしていた。
 彼は詩的な人間であったので、誰にも知られずに美しい処でひとり静かに死のうと、紅葉の美しい山の中に分け入っていた。
 そして、「ここ」へと出てきたのだった。
 「墓が・・・こんな山の中に、近くに集落でもあるのですか・・・」
 彼は眼鏡をかけた端正な顔立ちの若い男で、それに似つかわしく折り目正しい服を着ていたが、それは色あせてほころびが見えた。右手には小さな書物を抱えているが、これは、彼が肌身離さず持ち歩いている詩集だった。
 彼は眼鏡を直し、小道が墓から伸びているのを見た。
 (こんなところで死ぬのはいやですね・・・)
 そして彼は、その道へと入っていった。

 

 「おはよう」
 慧音は、迷いの竹林の中にある友人、藤原妹紅の庵の戸を叩いた。
 「上白沢慧音だ」
 中から返事はない。
 「?」
 もう一度戸を叩く。返事はない。
 「妹紅!いないのか」
 声を高めて言う。と、中から何かがうごめくような物音がした。
 慧音はいやな予感がした。
 「妹紅!妹紅なのか!?」
 叫ぶ。すると、
 「・・・・・け・・・ね・・・」
 弱々しい声がした。妹紅の声だ。
 「妹紅!」
 慧音は戸を開けた。すると、そこには藤原妹紅が仰向けに倒れていた。
 外傷はない。もとより彼女は蘇生(リザレクション)能力がある不死者なのでたとえ死んでも蘇ることができ、傷くらいならば、それはほどなく再生する。ただ、その服には、何かに突き刺されたような穴がいくつも開いていた。
 「妹紅!大丈夫か!」
 慧音は仰天し、急いで慧音を抱き起こす。
 「大丈夫・・・ちょっと・・・寝れば・・・」
 妹紅はかすかに笑った。しかしひどく消耗していることは明らかで、リザレクションに相当の体力・精神力を使ったらしい。であれば、甚大なダメージを受けたのだろう。
 「どうしたんだ!また輝夜と・・・」
 慧音は言いかけたが、明らかにそれとは様子が異なるので口をつぐみ、
 「誰にやられたんだ!」
 と言い直した。
 「恐ろしい・・・やつ・・・見たことが・・・ない・・・」
 妹紅はそう言うと、苦しそうに息を吐き出した。「はぁっ・・・はっ・・・!」
 慧音は詳しい話を聞くのは後回しとし、まず妹紅を抱き上げると床に運んで寝かせ、服を着替えさせてから食事を作り始めた。
 (妹紅があれほどまでになるとは・・・)
 慧音は心中穏やかではなかった。幻想郷の人妖で妹紅をこれほどまでにできる者はごく少ないし、そういった者は特に好戦的でもなく、輝夜以外で彼女にこれほどになるまでの戦いを挑む者もあるまい。つまり、恐るべきものがこの地にやってきたということになる。
 とりあえず手軽で消化のよいおかゆを作ると、椀に盛って妹紅の床に持ってゆく。
 妹紅は上体を起こしてそれを食べようとしたが、慧音は、
 「無理をするな。私が食べさせるから」
 と言った。
 妹紅は顔をしかめて、
 「馬鹿にするな。それくらい自分でできる」
 とお椀と箸を取って、ふーふーと冷まして一気にかき込んだ。
 「あ、あっつ!」
 妹紅はやや咳き込んだが、また勢いよくかきこんで平らげると、
 「おかわり!」
 と空の椀を慧音に突き出した。
 慧音は微笑んで、おかわりを持ってくる。
 妹紅はそれをすぐに平らげて、
 「おかわり!」
 これは妹紅が大食いなわけではなく、その栄養が片っ端から肉体の回復に使われているのである。
 妹紅は鍋いっぱいのおかゆをあっという間に平らげると、大きく一息つき、
 「ふう・・・落ち着いた。ありがとう」
 と慧音に礼を言った。
 「どういたしまして」
 慧音はにこりとしたが、すぐに真面目な顔になって、
 「いったい、何があったんだ?」
 と訊ねた。
 「・・・・・・」
 妹紅は両手を見下ろし、ぐっと握って、ある程度力が戻っているのを確認すると、
 「・・・よし」
 と言って立ち上がった。そして戸口へと歩いてゆく。
 「妹紅!まだ無理をするな!」
 慧音が後を追う。しかし妹紅は振り返らずに、
 「寝ていられるか!輝夜が・・・!」
 と語気荒く言った。
 「輝夜!?彼女がどうかしたのか!?」
 慧音の言葉に、妹紅は、
 「ついて来たら話す!」
 と言うや、庵を出て飛び上がった。
 「待ってくれ!」
 慧音もその後を追って飛び上がる。
 (いったい・・・何が起こっているんだ・・・)
 慧音の不安はいっそう大きくなった。

 

 「・・・あ、来た。ちょっと、早苗!」
 ここは妖怪の山のふもとの博麗神社。秋になり、境内の落葉樹も色づいて次々に落ち続けており、毎日の掃除が大変な時期になっている。
 神社の巫女・博麗霊夢は、山中に鎮座する守矢神社の風祝・東風谷早苗が鳥居をくぐってきたのに気づくと、早速声をかけた。
 「はい、何でしょうか?」
 早苗は、博麗神社境内に鎮座する守矢神社の分社の様子を見、兼ねて掃除を手伝うために訪れたところだった。
 「ちょっと待って・・・」
 霊夢は社殿裏手の住まいにいったん戻ると、何かを持って出てきた。
 それは、銀色のアタッシュケースだった。
 「これ、今朝起きたら境内に転がってたんだけど」
 霊夢はそれを無造作に地上に放り出した。「どうも外から来たものらしいから、早苗なら何だかわかるんじゃないかって思って」
 そのケースは銀色で、中央部は黒塗りになっており、そこに“SMART BRAIN”というアルファベットを模したロゴが入っていた。
 「これは・・・」
 早苗の目が輝く。そして早速ケースを開けた。
 そこには、銀色のベルト、銃のグリップのようなもの、そして銃身のようなものが収められていた。
 「なんだ、デルタギアですか・・・」
 早苗はちょっとつまらなさそうに言った。
 「何なのそれって」
 と霊夢が訊く。
 「おもちゃですよ。“仮面ライダー”の。劇中ではこれで変身するんです」
 と早苗。
 「仮面・・・ああ、去年来た奴?」
 「あれとはまた別なのですが・・・こっちはTVのですし。これはギミックが少ないんですよねえ。設定上は最強なんですけど」
 「ふーん」
 「にしても、これが幻想入りですか・・・?まだ人気あると思うんですけど。でもまあ、デルタですしねえ」
 「ふうん・・・」
 霊夢はちらりと笑って、「やってみせてよ」
 と言った。
 「え?」
 「やってみて?どうやるの?」
 「えー、やるんですか?」
 早苗はちょっと恥ずかしそうだったが、
 「仕方ないですね」
 と、ベルトを取り出して、
 「まずこのベルト、“デルタドライバー”を・・・腰に巻きます」
 と、腰に巻いた。
 「ふんふん」
 社殿の階段に腰を下ろした霊夢がうなずく。
 「・・・・・ちょっと重いですね。今更コンプリートセレクションで出たんでしょうか?」
 早苗はやや首をかしげたが、さらに銃身の形をしたものをそのベルトの右側面に装着した。
 「これはデルタムーバーっていいます。設定上ではデジタルビデオとして使えますが・・・まあ、いいです」
 そして、銃のグリップの形をしたツールを右手に持った。
 「これがデルタフォン。いちおう携帯電話です。これをデルタムーバーに挿入して変身します。ほかのやつは変身コードがキー入力なんですけど、これだけは音声入力なんです。一番最初に開発されたプロトタイプという設定で・・・ま、おもちゃですから音声認識はテキトーなんですけどね。いちおうは携帯電話という設定なんですけど、全部音声入力なんで、こんなもの実際にそばで使われたらうっとうしいことこの上ないです」
 「詳しいわね・・・何言ってるかさっぱりだけど」
 「まかせてください」
 早苗はなぜか得意げに言い、デルタフォンのスイッチを入れた。起動音が辺りに響く。霊夢はちょっとびっくりした。
 早苗はゆっくりとデルタフォンを顔の横に持っていくと、トリガーを引いて、
 「ではいきますよ――“変身”!!」
 “Standing by!”
 早苗の「変身」という声に応じてデルタフォンから電子音声が発せられ、次いでにギュオンギュオンという変身待機音が響き渡った。
 「わ、うるさい」
 霊夢は顔をしかめた。
 (あ、感度いいなあ。アークルからバ○ダ○も気合入れるようになったか。このクオリティでカイザギアも出てるのかなあ・・・)
 早苗はそう思いつつ、デルタフォンをデルタムーバーに勢いよく突き入れた。
 “Complete!”
 電子音声が響き―――早苗の身体にブライトカラーのラインが走り、次いで身体がまばゆく光った。
 「きゃっ!」
 霊夢が目をそむける。
 「え!?」
 早苗も驚きの声を上げた。
 光が収まると、霊夢は早苗に視線を戻した。そして、
 「・・・・・うわ!」
 そこに立っているものに驚いた。
 それは黒地に白い幾何学的なラインの入ったボディ、顔の中央には白いラインで三等分された大きなオレンジ色の眼のようなものがある、異形の姿だった。
 霊夢は感嘆のため息をついて、
 「最近の外のおもちゃは・・・すごいのね」
 と言った。
 「え?・・・・・うわ!?何ですかこれ!?本当に変身してる!?」
 早苗は自分の身体が光ったのにまず驚いたが、霊夢の反応に自分の手足を見てまた驚いた。
 「え?どーしたの?」
 と霊夢。
 早苗は呆然として、
 「・・・・・・・・これ、本物みたいです」
 と言った。

 

 「彼」は、森の中の道を歩いていた。
 無縁仏の墓場から先へ進んだものの、美しかった紅葉は消え、彼の周囲には鬱蒼とした、恐ろしい森がそそり立っていた。
 (何て所に入ってしまったんだ・・・)
 彼は後悔した。そして後を振り返った。
 しかし、そこには鬱蒼とした森しか見えなかった。そして、もし引き返したとしても、そこにあるのはさびれた墓地なのだ。
 もう、彼には前へ進むしか道はなかった。
 彼は疲労し、足取りも重く歩き続けた。
 彼には、この陰気な森が零落した自分自身をあらわしているように思えてきた。
 あの頃は良かった。
 巨大な組織の一員として思う存分力を発揮し、行く手には栄光が待ち受けている、そう信じていた。
 ・・・・・・とんでもなく暴力的で恐ろしい奴がすぐ傍に居たのだけは耐え難かったが。
 しかしそれもあっという間に瓦解した。自分自身もそれを続けていくことに耐えられなかった。
 そして、「人間」として生きていこうとした。しかし、やはり自分はもう人間たちの中には適応できなかった。
 自分の性格のせいもあるだろう。だが、人間と自分ではもう根本的に在り方が違うのだ。
 あの時、「彼女」とともに行けば、この苦悩もなかったのだろう。だが、自分はそれから逃げてしまった。
 彼女の行為こそ、自分のような存在にとって相応しかったのだ。
 「冴子・・・さん・・・」
 彼はつぶやいた。
 しかし、もう彼女と会うことはあるまい。もし会えたとしても、今さら自分を受け入れてはくれないだろう。
 「はは・・・」
 彼は自嘲の笑みを漏らし、それから大きな溜息をついた。
 「疲れた・・・」
 彼は立ち止まった。
 足音が止むと、辺りは不気味な静寂に包まれた。
 「・・・・・・!」
 何者かが自分を注視しているような感覚に捉われる。
 彼は狼狽して周囲を見回した、その時、
 ガサッ!!
 背後で茂みが音を立てた。
 「ひいっ!!」
 彼は仰天し、悲鳴を上げると一目散に前へ走り出した。
 茂みから出てきたのは山鳥だったが、彼にはそれを確認する余裕はなかった。彼は必死で逃走した。
 どれくらい逃げたか、彼はちらりと背後を見た。何もいなかった。
 しかし、彼は完全に恐怖に捉われていた。彼はなおも逃げ続けた。
 そのうち、彼の目に涙が浮かんできた。
 違う。他人と自分が違うからではない。
 自分は臆病すぎるのだ。
 何にでもあと一歩が踏み出せず、尻込みして逃げてしまう。
 だから、どこにも入れず、どこにも受け入れられなかったのだ。
 彼は目を閉じた、その時、路上に露出していた石につまずいた。
 「!」
 彼は大きくつんのめると、大きな音を立てて路上に突っ伏し倒れた。
 彼はさらに自分がいやになったが、その時、
 「おい!どうしたんだ!」
 という少女の声が横合いから聞こえた。
 頭をめぐらせてそちらを見ると、そこには何やら店のような木造の建物があり、「香霖堂」という札がかかっていた。そして、その戸口に一人の少女が立っていた。
 十代前半の少女で、金髪・金瞳、やや芯の通った愛らしい顔立ち、そして白いシャツに黒い上着とスカート、白いエプロンを着けている。彼にはまるで魔法少女のコスプレ、いや仮装をしたように思えた。
 その少女は彼のほうへ走ってくるとしゃがみ、
 「大丈夫か?立てるか?」
 と心配そうに声をかけた。
 「あ、ええ・・・大丈夫です」
 彼は素早く起き上がると土埃を払い、表情を取り繕って、
 「ありがとう」
 と会釈した。
 「ならよかった」
 少女は微笑んだ。言葉遣いは男っぽいが、優しい女の子のようだ。
 少女は彼の走ってきた方向を見て、
 「あちらから来たということは・・・“外”から迷い込んできたのか。何かに襲われたのか?」
 と訊ねてきた。
 「外・・・から?」
 彼は首をかしげたが、村の外とかそういう意味だろうと合点した。しかし、この少女の格好は秋葉原とかそういったところではよく見かけるが、このような山中の村ではいかにも場違いに思えた。
 「ああ、わけがわからないんだな」
 少女は笑って、「それじゃ説明するから、店に入って。お茶も出すから」
 と、彼を店へと招き入れた。
 「私の名前は霧雨魔理沙だ」
 と少女は言った。「あなたの名前は?」
 彼は答えた。
 「琢磨・・・逸郎です」


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