東方W


 (CM終わり。Bパート開始)

 「――黒須志津子。28歳。京都出身で、現在は風都在住。元コレギウム・ムジクム風都のチェンバリスト」
と、フィリップは言った。
 「コレギウム・ムジクム風都?」
 竜が首をかしげる。
 「主に古典派以前の作品を当時の楽器もしくはそのコピーを用いて演奏する、いわゆる“古楽アンサンブル”だ」
とフィリップ。「御影英彦もそのメンバーに名を連ねていた。多才な人物だね。黒須志津子は御影英彦のスカウトで京都から風都にやってきた。かなり親しい関係だったようで、他のメンバーは、二人が結婚するのではないかとまで思っていたようだ。それだけに、彼の結婚に彼女は非常なショックを受けていたという。
 「コレギウム・ムジクム風都は小編成のために文化ホールの小ホールを会場にしていた。御影英彦が新妻とのコンサート会場に文化ホールを選んだのも慣れていた会場だったからだが、それは黒須志津子にとっても同様だった。そして彼女は、事件の後、コレギウム・ムジクム風都を退団している。
 「ただ、彼女には完全なアリバイがあった。事件の同時刻、彼女はバロック歌曲演奏会の伴奏で、公衆の面前でチェンバロを弾いていた。そのため、早々に容疑者から外されている」
「自分を捨てて他のアーティストと結婚した男を、ドーパントになって女ごとまとめて消してしまう。そして土地勘も充分・・・
そして京都に住む蓮子ちゃんが巻き込まれたのは、別世界とはいえ京都出身のため、か」
 亜樹子が腕組みして言った。そしてパンと手を打って右手を立て、
 「よし、わかった!犯人は黒須志津子だ!」
とどっかの警部さんみたいなことを言う。
 「だが、まだ何の物的証拠もない」
とフィリップ。「可能性が高い、という程度だ」
 「しかし見当がつけられたのは大きい。もう一度黒須志津子を重点的に洗い直してみよう」
と竜。
 フィリップは本を閉じて言った。
 「今回の事件がもしドーパントによるものだとすると、平行世界にまで干渉できる可能性のあるメモリは“ボーダー”のメモリだ。自分だけでなく他人も自在に空間移動させることができる恐ろしいメモリ・・・使いこなせる人間はほとんどいないだろう。使用者はすでに暴走している可能性が高い。気をつけて動かなければならないよ」
 「俺に指図するな」
 竜はフィリップのほうを見て釘を刺すように言った。「そのような不覚は取らん」
 そして、こいしのほうを見た。
 「君はどうする」
 こいしはフィリップのそばにくっつくように立っていた。どうやら彼のことが気に入ったようだ。
 「私はここにいるわ。面白そうだから」
 「また消えたりしないな?」
 「そうしたら帰れなくなりそうだから、頑張ってみんなに気づかれるようにする」
 こいしはくすりと笑って答えた。
 竜は入り口のほうを向いて、
 「そうか、じゃあ左、その子を任せた。俺は行く」
 「ちょ、何言ってんだ!」
 翔太郎が言い返そうとしたが、竜はもう出て行ってしまっていた。
 「まったく・・・」
 翔太郎は蓮子とこいしを見て、「二人も泊められるかなあ・・・」
 「あ、私、ご飯作ります!」
と蓮子が立ち上がった。「お世話になるなら、何でも手伝いますよ!」
 それを聞いたフィリップが目を輝かせて、
 「君、カレーは作れるかい?」
と蓮子に訊ねた。
 蓮子はうなずいて、
 「ええまあ」
 「そうか!」
 フィリップは蓮子をホワイトボードの前に連れて行って、
 「このスパイスを使ってカレーを作ってもらえないだろうか。最高の配合だと思うが、実際に作ってみないと机上の空論だからね」
 「・・・・・・・・・」
 蓮子はちょっと口元を引きつらせたが、
 「えっと、スパイス専門店とかあります?」
と訊ねた。

 

  「・・・ここか」
 竜は黒須志津子のマンションの前に立っていた。
 京都から引っ越してきた彼女は郊外の閑静な一軒家を借りて暮らしていた。チェンバロの練習により近所に迷惑をかけないためだ。彼女は所属団体を退いた現在も風都に住民票を置いており、ここに住んでいるはずだ。
 資料によると、黒須志津子は弟の黒須良とともに住んでいた。弟の良は20歳で、近郊の音楽大学に籍を置いており、京都の自宅から姉のもとに引っ越してきて、ここから通学しているらしい。
 竜は「黒須」と表札のかかった家のインターホンを鳴らした。
 しばしの後、
 “はい、どなたですか?”
 という若い男の声がインターホンから聞こえてきた。
 (弟か・・・)
 「警察だ」
 と竜は言った。「御影英彦失踪事件の件で、黒須志津子さんにお話を伺いたい」
 しばしの沈黙の後、
 “・・・・姉はおりません”
 と暗いトーンの声が答える。
 「いない?外出中ということか」
 “旅に出ております”
 「旅?どこへ」
 “わかりません”
 「わからない?」
 “旅に出る、と言い置いて、出て行きました。どこへ行ったかは私にもわかりません”
 「どういうことだ。詳しく話を聞かせてほしい」
 “・・・・・・・・”
 少し間があってドアの向こうで音がし、ドアロックを外す音に続いてドアが開き、すらりとした細身の青年が姿を現した。
 「きみは黒須良くんか」
 警察手帳を見せて竜が訊くと、
 「はい」
 とその青年、黒須良はうなずいた。

 「――姉は、あの事件の後、ひどく混乱していました」
 黒須邸の居間で、黒須良は竜に事情を話していた。その表情は沈鬱で、その声も苦痛を含んでいた。
 「別れたとはいえ、恋人だった人の不可解な失踪に昼も夜も心を痛めていて、
僕も家で姉の練習を聞いていましたが、もうまともな演奏ができなくなっていました。それから間もなく姉は所属団体をやめてしまい、それから・・・」
 「旅に出たのか」
 「はい」
 「いつのことだ」
 「昨年の秋・・・11月ごろでしょうか」
 「ほとんど半年じゃないか」
 竜は眉をひそめて、「いくらなんでも長すぎるだろう。なぜ捜索願を出さない」
 「姉は、自分は大丈夫だ、心の整理がつくまで、心の赴くまま旅をしてみる、と言っていました。絶対に自殺したりはしないから、と」
 「京都には帰っていないのか」
 「一度戻ったようです。12月の半ば、僕が帰省する少し前に。家のほうに確かめてくれればわかると思いますが・・・でも、今頃どうして姉のことを」
 黒須良は竜を見て、「姉には完全なアリバイがあるということがわかっているはずですが」
 「担当が変わってね。もう一度最初から洗い直し、というところだ」
 「担当が?」
 「そうだ。失踪事件の犯人は、ドーパントの可能性が高い」
 竜は鋭い視線を良に向けた。
 良は目を見開いた。
 (何か知っているな・・・)
 「お姉さんに、事件前後、不審な行動はなかっただろうか?誰か怪しい人物と接触したとか、不可解な行動をしたとか・・・」
 「それは・・・わかりません」
 良は明らかに先ほどとは違う、不安定な態度になっていた。
 (これは怪しい。やはり黒須志津子は・・・しかし、肉親ともなるとそう簡単に口を割るまい)
 「そうか」
 竜は立ち上がった。
 「何か気づいたことがあれば、警察に連絡してほしい。もちろん、お姉さんが帰ってきたときはいち早くだ。それでは、今日のところはこれで失礼する」
 竜は黒須邸を立ち去った。
 その後姿を、黒須良は不安に怯えたような表情で見送っていたが、我に返ると、勢いよく玄関のドアを閉めた。
 その音を聞いた竜は、そっとビートルフォンを放した。ビートルフォンは黒須邸のほうに飛んでいく。
 (これで彼が黒須志津子と連絡を取るかどうかだが・・・)

 

 「この配合はかなり独特ですけど、何かの本に載ってたんですか?」
 「いやー・・・この通りに買ってきてくれって頼まれまして」
 「へえ・・・どんな味になるんですか?私も食べてみたいですよ」
 ここはショッピングモール内のスパイス専門店。翔太郎に連れられてやってきた蓮子は、フィリップに教えられたとおりのスパイスを、店員にメモを見せて取り分けてもらっていた。
 「で、彼に食べさせてあげるんですね?」
 その女性店員は、並んだスパイスやインドの食材を物珍しそうに見て回っている翔太郎のほうを見てにこりと笑った。
 「へ?」
 蓮子は翔太郎のほうを見て、ぱっと赤くなり、
 「いやいやいやそういう関係じゃありません、確かにこれはあの人も食べることになりますけど」
と否定した。
 「あ、そうですか、すみません」
 店員は苦笑しながら頭を下げた。「・・・・・・と、はい、以上ですね」
 「ありがとうございます」
 「お、終わったか」
 会計をしている蓮子を見て、翔太郎が戻ってきた。
 「じゃあ、帰るか」
 「はい」
 二人は店を出、ハードボイルダーで鳴海探偵事務所の前へと戻ってきた。
 と、照井竜の姿があった。
 「照井、何か掴んだのか」
 と翔太郎が聞くと、
 「いちおう、フィリップに伝えに来た」
 と竜が答える。
 「てめー」
 翔太郎は顔をしかめて竜を見たが、その表情が険しくなる。
 「どうした?」
 竜が怪訝そうな顔をする間もなく、
 「アブねえ照井!」
 翔太郎が手にしていたメットを投げつけてきた。
 「なっ・・・!」
 それをかわした竜は、
 「何をする!」
 と言おうとしたが、背後でくぐもった悲鳴が聞こえて驚き、そちらのほうを見る。
 翔太郎が投げつけたメットは、異形のもの――ドーパントに命中しており、そのドーパントは不意を突かれて転倒する。
 「蓮子ちゃん、離れて!」
 「は、はいっ」
 蓮子は探偵事務所へと駆け込んでいった。
 翔太郎はダブルドライバーを腰に当てた。ベルトが伸張し、腰に巻きつく。
 そしてジョーカーメモリを抜いた。
 「フィリップ!変身だ!」
 
 鳴海探偵事務所内――
 「―――やれやれ、カレーはしばらくおあずけだね」
 フィリップはサイクロンメモリを抜き出し、起動スイッチを押して構えた。
 “サイクロン!”

 “ジョーカー!”
 翔太郎もメモリを構え、
 「「変身!!」」
 フィリップがサイクロンメモリをドライバーにセット、同時にメモリとフィリップの意識が翔太郎のドライバーに転送され、フィリップはその場に倒れた。
 翔太郎はジョーカーメモリをセットし、バックルを勢いよく左右に押し広げる。
 “サイクロン!ジョーカー!”
 旋風が巻き起こり、翔太郎は黒いマフラーをなびかせる仮面ライダーW・サイクロンジョーカーに変身した。
 「貴様・・・・!」
 竜もアクセルドライバーを腰に装着し、アクセルメモリを抜いた。
 “アクセル!”
 「変!身!!」
 “アクセル!”
 竜がドライバーのパワースロットルを回す、とともに仮面ライダーアクセルに変身する。
 “・・・・・・・・・”
 起き上がったそのドーパントは、大きな帽子に赤い飾りをつけ、上半身は中国の導士をイメージしたような紫のボディ。下半身にはドレスのような長いスカートを伸ばしていた。
 「いくぜ!」
 サイクロンジョーカーはドーパントに飛びかかったが、ドーパントは空間の裂け目に入るかのようにすうっと消えてしまった。
 「何っ!?」
 その背後にドーパントが現れ、Wは殴り飛ばされる。
 「ぐあっ!」
 Wは転倒した。
 “やはり、ボーダーのメモリか”
 ボーダー・ドーパントはすでにその姿を消していた。
 「どこに行きやがった!」
 「ぐっ!」
 と、アクセルが背後から殴り飛ばされる。
 「くそっ」
 アクセルが起き上がったときには、ボーダーの姿はなかった。
 「こすい真似を・・・!」
 その二人の前に突如、ボーダーが出現した。
 「!!」
 同時に蹴り飛ばされ、二人は吹き飛ばされ路上に転がる。
 「くそっ!どこから出てきやがる・・・!」
 “翔太郎、ルナトリガーだ”
 「お、おう」
 Wはサイクロン・ジョーカーのメモリを抜き、ルナ・トリガーのメモリをセットした。
 “ルナァ!トリガァァァ!”
 サイクロンジョーカーがルナトリガーにチェンジする。そしてトリガーマグナムを構えた。
 「――――」
 静寂。
 と、音もなくアクセルの背後にボーダー・ドーパントが出現した。
 瞬間、デンデンセンサーの感知音が響く。
 「今だ!」
 同時にWがトリガーマグナムを発射した。光弾は大きくアクセルをかわしてボーダーに命中、
 “!!!?!!?”
 ボーダーのボディにいくつもの爆発が起こり、ボーダーは転倒した。
 「ズルできるからって、好き勝手できると思うなよ!」
 ここは探偵事務所前。デンデンセンサーがちょうど事務所前を見張り中だったのだ。
 「くらえ!」
 Wがトリガーマグナムを連射する。しかし、ボーダーに近づいた光弾の前に空間の裂け目ができ、弾はすべてその中に消えてしまった。
 「何!」
 “エンジン!”
 しかしその隙を突いてアクセルがエンジンブレードにエンジンメモリをセットし、斬りかかった。
 連続して能力を出すことができず、ボーダーが斬られて小爆発を起こす。
 “エレクトリック!”
 アクセルはボーダーに接近したまま次々に斬撃を繰り出した。ボーダーは電撃のショックによって能力を発揮できないようで、なすがままに後退する。
 “翔太郎、このままメモリブレイクだ”
 「おう!」
 Wはトリガーメモリを抜き、トリガーマグナムに挿入する。
 “トリガー!マキシマムドライブ!”
 アクセルもクラッチレバーを引き、スロットルを回した。
 “アクセル!マキシマムドライブ!”
 「「トリガー・フルバースト!!」」
 「振り切るぜ!」
 Wがトリガー・フルバースト、アクセルがダイナミックエースと、ダブルで必殺技を繰り出す。
 ボーダーはかわせない。メモリブレイク、と思われた瞬間、
 ドォォォン!
 凄まじい雷が落下し、二人のマキシマムドライブを弾き飛ばした。その衝撃で二人が吹き飛ぶ。
 「何!?」
 「―――その者を倒させるわけにはいきませんねえ・・・私の大切な患者ですので」
 「その声は!」
 Wが道の向こうを凝視する。
 その視線の先に、ゆっくりと歩いてくるウェザー・ドーパントの姿があった。

 (Bパート終わり、CM)

 
 ウェザーは悠然と歩いてくると、ボーダーの背後で立ち止まった。
 「逃げなさい」
 ウェザーの声に応じ、ボーダーが空間の裂け目に消える。
 「井坂・・・深紅郎・・・!」
 アクセルが怒りのこもった声でエンジンブレードを構えた。「貴様も絡んでいたのか!」
 「絡む?」
 ウェザー――井坂深紅郎は首をかしげて、
 「私は患者のケアをしているだけです。患者が私生活でなにをしでかそうと私の知ったことではありません」
 と嘲る様に言い、
 「あれは私の大切な患者です。やらせるわけにはいきません」
 「どうせ、研究対象としてだろう!」
 と翔太郎。
 「人の革新のためには必要なことです。華岡青洲の妻しかり、牛痘しかり・・・」
 「屁理屈を言うな!」
 アクセルが斬りかかる。
 “ヒート!メタルゥ!”
 Wもヒートメタルにチェンジ、メタルシャフトを振り回して打ちかかった。
 ウェザーは二人の一撃を同時に受け止め、はじき返した。そして竜巻を巻き起こして二人を吹き飛ばし、竜巻の中から雷撃を放って二人を打ち据える。
 「ぐああっ!」
 「うおおお!」
 Wとアクセルがぶるぶると震え、その場にばたりと倒れた。マキシマムドライブ後で消耗していたこともあり、二人の変身が解けてドライバーが路上に落ちる。
 「先日はよくもやってくれましたね・・・」
 ウェザーがゆっくりと歩み寄ってくる。「今ここで、お返しをしてあげましょう」
 「くっ・・・」
 翔太郎は立ち上がろうとしたが、足がいうことを聞かず、再び倒れる。
 「さあ、最後です・・・」
 ウェザーが右腕を振り上げる。その正面に、フィリップが飛び降りてきた。
 同時にファングメモリがライブモードで出現、井坂の右腕に一撃を食らわせる。
 「うおっ!おまえは・・・!」
 「翔太郎、今度はぼくが戦おう」
 フィリップが右手を突き出した。その手にファングメモリが飛び込む。
 「おう!」
 翔太郎がダブルドライバーを腰に装着した。同時にフィリップの腰にダブルドライバーが出現する。
 フィリップはファングメモリを素早くメモリ形態に変形させ、起動スイッチを入れた。
 “ファング!”
 翔太郎がジョーカーメモリを構える。
 “ジョーカー!”
 「「変身!!」」
 フィリップがファングメモリをセット、翔太郎がジョーカーメモリをセットすると、ジョーカーメモリがフィリップのドライバーに転送され、翔太郎がその場にばったりと倒れる。フィリップは最後にファングの変形したガジェット部分を横に倒し、
 “ファング!ジョーカー!”
仮面ライダーW・ファングジョーカーに変身した。
 「あなたには一番腹が据えかねていました」
 ウェザーはWに向かって言った。「好都合です。あなたを殺して、気分を鎮めることにしましょう」
 「フィリップ・・・!」
 竜は翔太郎を物陰に避難させた。「気をつけろ・・・」
 自分も飛び出していきたいが、今の消耗度ではかえって荒々しいファングジョーカーの足手まといになる。悔しいが、ここは見守るしかない。
 Wとウェザーが格闘戦を繰り広げる。接近戦では抜群のパワーを誇るファングジョーカーだが、それでもウェザーを圧倒するまでには至らない。
 突如、ウェザーの周囲の温度が上昇した。同時に炎の弾が出現し、Wにカウンターで命中する。
 「うわっ!」
 Wが吹き飛んで転がる。
 「一人では私には勝てませんねえ」
 ウェザーがWに向かって歩いてゆく。「おまえの片割れは疲労している。その変身もいつまで維持できるか・・・」
 「く・・・」
 「はっはっは」
 ウェザーが笑ったとき、その足を何者かが払った。
 「うおっ!」
 ウェザーは転倒する。
 「だ、誰だ・・・!」
 面食らって起き上がったとき、そこには一人の少女が立っていた。
 「!?」
 「・・・フィリップに何するの?」
 いつの間にか古明地こいしがウェザーの傍らに立っており、養豚場の豚を見るような目つきでウェザーを見下ろしていた。
 「こいしちゃん!」
 フィリップが叫ぶ。「危ない!」
 こいしは彼の言葉に聞きもあえず、ウェザーを見下ろしながら、
 「死体にして、あそこの塔に飾ってあげようかしら」
 と、風都タワーを指差した。
 「何だおまえは・・・!」
 言いかけたウェザーは、自分の周囲の路面を割って、何かが生い出てきているのに気づいた。禍々しい、茨のような植物・・・
 「これは・・・おまえ、ドーパントか!」
 「知るか」
 こいしは無表情に言った。その周囲にも茨が茂り、不気味な赤と青の薔薇の花が咲く。
 こいしはその一輪を摘み取り、ウェザーに突きつけた。
 「殺してあげる・・・“サブタレイニアンローズ”―――」

 (前編終わり。中編へつづく)

仮面ライダー!W!

 「拒絶された薔薇はいっそう激しく燃え上がる・・・あなたに拒絶できるかしら。復燃“恋の埋火”―――」
 「志津子さん、どうして逃げてるんでしょう。逃げる理由があるんでしょうか。いくら旅をしたって、自分でやったことの心の整理なんかつくはずないのに・・・もしつけられるとしても、それは心を凍りつかせること・・・とても不幸なことじゃないでしょうか?」
 「ボーダー・ドーパント、その正体は・・・」
 「・・・・・メリー!!」
 「蓮子!」
 「「ファングストライザー!!」」
 “あなたたちも引き裂いてあげましょう”
 「フィリップ・・・・・・!」

これで決まりだ!
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