東方ディケイド


 

(後編Bパート始まり)

 「うおおお!」
 クウガが怪人たちの群れの中でただ独り奮闘する、しかし多勢に無勢、次第に劣勢となってきた。
 「くそっ・・・」
 その時背後から殴り飛ばされ、クウガは吹き飛ばされて転倒した。それに向かって怪人たちが一斉に飛びかかる――その時。
 「“アマテラス”!」
 凄まじい放射状の閃光が飛び、怪人たちがそれをまともに食らって吹き飛んだ。
 「えっ・・・?」
 驚きながら起き上がったクウガの前に、上白沢慧音が立っていた。
 「ユウスケくんか。すまない、独りで戦わせてしまって。皆を避難させていたのでな。でももう大丈夫だ。私も戦う」
 「先生!」
 慧音は一振りの太刀を持っていた。彼女はまた一枚のスペルカードを取り出すと、その刀身に当て、ゆっくりとスライドさせる。
 「“三種の神器―剣―”・・・」
 刀身が眩く光りはじめた。
 「なんだ貴様は。この大ショッカーに逆らうというのか」
 とアポロガイスト。
 慧音は冷笑して、
 「逆らう・・・?ちがうな。大事な生徒とこの里を“護る”。そのために戦うのだ」
 「何を・・・ふん、二人とも片付けてやるのだ。やれ!」
 怪人たちが慧音に襲いかかる。
 「いくぞ、ユウスケくん」
 「はい、先生!」 
 慧音とクウガの二人がそれに立ち向かう。
 「・・・これはすごい!最高のネタですっ!」
 その光景を光写真館の陰から文が撮りまくっていた。
 「・・・天狗さんは戦わないのかしら?」
 とキバーラが訊ねると、
 「それよりもスクープが大事です!今話しかけないで下さいっ」
 と一蹴されてしまった。
 「もー・・・がんばれユウスケー」

 


 場面は戻って、紅魔館前。
 「さあ、返事は?」
 夢美が霊夢に返事を促す。
 「だ、だれが・・・あんたに・・・ぐっ!」
 “ミミる~こと”が拳に力を込め、霊夢が呻く。
 「そう。残念ね。それじゃ、さよなら霊夢。“ミミる~こと”、やりなさい」
 “・・・・・”
 ロボットが霊夢の首に手を伸ばした、その時、 
 「えっ!?」
 “ミミる~こと”の周囲に突如無数のナイフが出現し、一斉にその全身に命中した。致命傷にはならなかったが、その衝撃は霊夢を自由にするには充分だった。
 霊夢は湖面をホバリングして間合いを取る。
 「けほっ・・・ずっと見てたんでしょ、早く助けなさいよ!」
 霊夢がわめく。
 「いや、何とかするかなー、と思って」
 門前、しもべのメイド・十六夜咲夜の差す日傘の下で、紅魔館の主たる吸血鬼レミリア・スカーレットがくすくすと笑って言った。「危なかったわね」
 「何!日中に出てきただと!?」
 夢美が驚く。
 「ブラム・ストーカーの読みすぎじゃないの?」
 レミリアは笑って、懐から一冊のマンガを出した。「この吸血鬼とかは、日光は大嫌いなだけで浴びても大丈夫だそうよ。まったくうらやましいわ。ま、直接浴びなきゃ問題ないってところね」
 そしてにやりと牙をむいて、「実際どういうものか試してみたいかしら?・・・自分の体で、科学的に」
 「誰が化物になどなるか!」
 夢美は右手を掲げた。美鈴を打ち倒した十字架状の光が出現する。「弱点の多い、不完全な存在などに!」
 そしてレミリアめがけ発射する。
 「小さい小さい」
 レミリアは両手を広げた。「―――――“不夜城レッド”!!」
 十字状の炎の柱が通常の垂直ではなく水平に撃ち出された。それは夢美の射出した光を飲み込み、そのまま夢美に襲いかかる。
 「うわああっ!」
 夢美は驚愕の叫び声を上げてそれをかわした。「ば、ばかな!」
 「よくかわしたわね」
 レミリアは微笑んで、「もっとも、幸運にもそれを避けられたのはあなたの運命。そして、この世界におけるあなたの運命を決めるものが・・・・今ここに現われる」
 そう言ったとたん、上空から霧雨魔理沙とその箒に乗った門矢士、そして東風谷早苗と彼女に抱きかかえられた北嵯峨ちゆりが降り立った。
 「あ、士!」
 霊夢が叫ぶ。
 夢美もちゆりの姿を見て、
 「!・・・ちゆり!あなた!」
 「教授!もうやめろ!あんたは大ショッカーに利用されてるだけだ!」
 ちゆりが叫ぶ。
 「何を言うの・・・私があの化物たちを利用しているのよ」
 夢美はかすれた笑い声を上げた。「私の科学には誰もがひれ伏す。魔術も、幻想も。大ショッカーも私が操ってね。私を理解しない、私の足元にも及ばないちっぽけな取るに足らない人 間など、征服してやる!」
 「正気に戻るんだ、教授!」
 「ちゆり・・・助手の分際で私に逆らうというの?ならばあなたも敵とみなすわ」
 「教授!」
 「そこまでだ」
 その時士が歩み出てきた。
 「何っ!」
 (*説教BGMはいりまーす)
 士は言った。
 「おまえの『科学』がおまえに何をもたらした?地位か?名誉か?幸福か?いや、そのどれももたらさなかった。学会からは追放され、誰にも顧みられることなく、今ここにたった一人の理解者をも突き放そうとしている。孤独な人間、人と接することのできない人間、人に何も伝えられない人間に一体何の価値がある?それに比べてこの幻想郷は、確かに古臭くて非科学的で理解できないことばかりだが、立場の違う人間と妖怪が共存して生きている。人間の神社に妖怪が集い、そこの巫女を護ろうと戦いを挑んでくるくらいにな。おまえの『科学』にそんなことができるか?ちっぽけな人と人とを結びつけることができるか?それすらできない、敵意しか生み出さない『科学』など、何の価値もない!」
 夢美は歯軋りして、
 「何を偉そうに・・・・!きさま、何者だ!」
 士はディケイドライバーを装着し、
 「通りすがりの仮面ライダーだ・・・」
 カードを掲げる。そして、
 「覚えておけ!変身!」
 カードをバックルに叩き込み、サイドハンドルを両手で押し込んだ。
  “カメンライド・・・ディケーイド!”
 士が仮面ライダーディケイドに変身する。
 「仮面ライダー・・・!“ミミる~こと”!やれっ!」
 “ミミる~こと”がディケイドに向かってゆく。両者は組み合い、格闘戦を始めた。
 「夢美!」
 霊夢が夢美の上空にワープし、蹴り飛ばす。「決着をつけるわよ!」
 「きゃっ・・・!の、望むところよ霊夢!」
 「里のほうに船がいるぜ!私はあっちへ!」
 「私も行きます!」
 魔理沙と早苗が里のほうに急行する。
 「――面白くなってきたわ!」
 レミリアが目を輝かせる。それを見て咲夜は苦笑した。
 「私はいかがいたしましょうか」
 「まあ、しばらくは見物ね」
 「かしこまりました」

 

 「うおおおっ!」
 クウガのマイティキックが怪人に炸裂し、怪人は吹き飛ばされて爆発した。
 「たっ!」
 慧音の剣が一閃し、また一体の怪人が倒れる。
 「くっくっく」
 アポロガイストは笑った。「なかなかやるではないか。しかし、二人だけで最後まで持つかな?」
 「はあ、はあ・・・」
 クウガはがくりと膝をついて大きな息をついた。まだ目の前には何体もの怪人がいる。慧音が加勢したとはいえ、全て倒してさらにアポロガイストを相手にするとなると・・・
 「怯むな!」
 慧音がぶんと剣を振った。「諦めの心は人の心を殺す。心に炎を燃やせ!」
 「は、はい!」
 クウガは力を振り絞って立ち上がる。
 「ほう、立ち上がったか。しかし無駄な努力なのだ」
 アポロガイストはせせら笑い、
 「やつらにとどめを刺せ!」
 と叫んだ、その時、怪人たちの前にまばゆい星々が着弾し、怪人たちが吹き飛んで転倒した。
 「何者だ!」
 アポロガイストがわめく。すると、
 「“時代が望むとき、仮面ライダーは必ず現われる!”」
 物見櫓の上から鋭い声が飛んだ。見ると、腰にベルトを装着した早苗が櫓の上に立っている。
 「何者だ、貴様!」
 アポロガイストの問いに、早苗はくすりと笑い、
 「大ショッカーの敵!そして人類の味方!お見せしましょう・・・・!仮面ライダー!」
 大仰に言うなり両腕を突き上げて頭上で交差、五芒星を描く変身ポーズをとり、両手を水平に広げつつ、
 「変んんんん・・・・・!」
 そしてばっと右腕を突き上げ、
 「――身ッッッ!とぅあ!」
 大きくジャンプした。ベルトから閃光がほとばしり、早苗は仮面ライダーに変身する。
 「ラ、ライダー!?」
 クウガが仰天する。
 「な、早苗、どうしたんだ!?」
 慧音も目を丸くする。
 「・・・・・・・・お願いだ、あとであの歴史を食べてくれないか」
 その隣に着地した魔理沙が顔を伏せて慧音に言った。
 民家の屋根の上に着地した早苗ライダー、またもったいぶったポーズをとりながら、
 「仮面ライダー!ステッラ!」
 と名乗りを上げる。
 「おお、かっこいい・・・!」
 クウガが感心する。
 「おいおい・・・」
 魔理沙が呆れた。
 「バカな・・・・・新しいライダーだと!?」
 アポロガイストは明らかにうろたえていた。
 「最初に言っておきます」
 早苗ライダーはアポロガイストを指差して言った。「私は、かーなーりー、強いですよ!」
 「ええい!」
 アポロガイストは早苗ライダーに銃口を向けて弾丸を連射する。しかし早苗ライダーは軽快な動きでそれをかわし、
 「幻想郷に仇なす大ショッカーめ、ゆ゛る゛さ゛ん゛!!!」
 と妙ににごった声で叫ぶやアポロガイストめがけジャンプ、ベルトのアタッチメントについていた祓串――ライダー用に強化されている――を外して振りかぶり、アポロガイストに斬りかかった。
 「ぬうっ!」
 「たああっ!」
 二人が切り結ぶ。
 「こちらもいくか!」
 と慧音。
 「はい!」「おお!」
 クウガと魔理沙が声を上げた、その時、
 「魔理沙!」
 屋根の上から声がした。振り向くと、永遠亭の兎、鈴仙・優曇華院・イナバが大口径の銃と一冊の本を持って立っていた。
 「あ!その本は・・・!」
 「永遠亭に忍び込もうとした曲者が持っていたわ。あなたのでしょ」
 「そうだぜ!」
 「あと、この銃も一時没収したわ。怪人相手に人間の生身じゃつらいでしょう、これ、変身ツールみたいだから、使ってみて」
 鈴仙は本と銃――ディエンドライバーとそのカードホルダーを投げてよこした。
 魔理沙はそれらを受け取って、
 「助かったぜ!あいつやっぱりそっちに行ってたのか・・・・で、これどうやって使うんだ?」
 「説明書はその本に挟まってるわ」
 と鈴仙。「師匠が書いてくれたわ。ま、そんなに難しくないから、頑張ってね」
 「助かるぜ」
 魔理沙は「説明書」をちらりと見るとディエンドライバーをひゅんひゅんと回してガチッと握り、カメンライドのカードを抜き出してセットし、スライドさせた。
 “カメンライド・・・”
 「変身!」
 トリガーを引く。昨日見ているのでだいたいわかっていた。
 “―――ディエーンド!”
 魔理沙が仮面ライダーディエンドに変身する。すかさずアタックライドのカードを抜き出し、
 “アタックライド・・・ブラスト!”
 無数の光弾が乱舞し、怪人たちに命中爆発した。
 「うおお・・・仮面ライダーもなかなかいいもんだな」
 魔理沙ディエンドも気分がのってきた。
 「たあっ!とう!」
 一方、早苗ライダーは俊敏な動きでアポロガイストを翻弄していた。
 「ぬうう・・・!」
 アポロガイストは飛びのくと、
 「ガイストカッター!」
 左手の盾を投げつける。しかし、
 「とぅあ!」
 早苗ライダーはジャンプするとそれを踏み台にしてさらに高くジャンプ、同時にバックルを押してカードを抜き出すと右脚のソケットに挿入、もう一度バックルを押した。
 “スパークリング!”
 ベルトから光がほとばしり、右脚に収束する。
 早苗ライダーは一回転しながら、
 「ライダァァァ、キィィィック!」
 と叫び、そのままアポロガイストめがけ急降下した。
 「ぐわあああああ!」
 盾を投げてしまって防御の手段がなかったアポロガイストはよけきれずにそれを食らい、小さな爆発とともに後方に吹き飛んだ。
 「とどめです!」
 踏み込んでいった早苗ライダー、しかしアポロガイストは手をばっと上げてオーロラの壁を出現させ、その中から巨大なエレファントオルフェノクを召還した。
 「きゃあっ!」
 その突進に早苗ライダーが吹き飛ばされる。その隙に、アポロガイストは壁の中へと消えた。
 「あ・・・・うう・・・っ・・・」
 倒れて動けない早苗ライダー、その上にエレファントオルフェノクがのしかかってきた。
 「きゃあああっ!」
 早苗ライダーが押しつぶされようとする寸前、ディエンドがエレファントオルフェノクを銃撃、ひるんだ隙に早苗ライダーは転がって逃れた。
 「大丈夫か?深追いしすぎだぜ」
 「魔理沙さん?す、すみません・・・」
 「しっかし、でかい奴が出てきたもんだぜ」
 「だ、大丈夫です。こういうときのために・・・」 
 「?」
 早苗ライダーは右脚からカードを抜くと、くるりと裏返した。カードの裏面は赤くなっていたが、今度はその面を表にしてバックルに挿入する。すると、
 “カナコ・モード!”
 ベルトから音声が発せられ、一瞬にして早苗ライダーは赤いボディのライダーにフォームチェンジしていた。背中に注連縄状のものが付き、それに太い柱がマウントされている。
 “やれやれ、早苗、しっかりしろ”
 ライダーの背後に腕組みした神奈子がぼんやりとした姿で立っていた。
 「すみません、神奈子様・・・」
 「うおお、何か憑いてるぜ」
 “それじゃ、いくか早苗”
 「はい!」
 早苗ライダーは太い柱を外すと右脇に構えた。そしてバックルを叩いてカードを抜くとその柱に挿入する。
 “フル・チャージ!”
 バックルの音声とともに柱がまばゆい光を放った。
 ドオオン!
 轟音とともにエレファントオルフェノクが光の奔流に飲み込まれて爆発、塵となって吹き飛ぶ。
 「すごいぜ!」
 魔理沙が目を輝かせた。しかし、
 「ううっ!」
 早苗ライダーが胸を押さえて苦しむ。と思うと、突如変身が解除され、バックルが早苗の腰からはじけ飛んで転がった。見ると、バックルは煙を吹いている。
 「はあっ、はあっ・・・」
 早苗が荒い息をついた。
 “ああ・・・エネルギーがオーバーロードしてしまったか。大丈夫か、早苗”
 神奈子の幻影が早苗を優しく抱く。
 「は・・い・・・大丈夫・・・です」
 早苗はちらりと笑ったが、その場にへたり込んでしまった。
 「飛ばしすぎだぜ」 
 魔理沙ディエンドがその肩を叩いた。「でも、かっこよかったぜ」
 「魔理沙さん・・・」
 「あとは任せろ!」
 ディエンドは残った怪人に向かって走っていった。
 


 ドォン!ドォン!
 「くっ!」
 ディケイドは“ミミる~こと”の張る弾幕になかなか近づけないでいた。周囲が爆風で見えなくなったその時、
 「!」
 突如目の前に“ミミる~こと”が現れ、パンチで吹き飛ばされる。
 「ぐっ!」
 間合いが離れ、再び“ミミる~こと”はミサイル発射体勢に入った。
 ディケイドはケータッチを取り出す。同時にミサイルが発射された。
 “クウガ!アギト!リュウキ!ファイズ!ブレイド!ヒビキ!カブト!デンオウ!キバ!”
 ディケイドはケータッチにコンプリートカードを挿入すると高速タッチであっという間に9ライダーの紋章を光らせ、最後にディケイドの紋章を押す。
 “ファイナルカメンライド・・・ディケーイド!”
 ディケイドがコンプリートフォームに変身した。素早くバックルを右腰に移すとケータッチを装着、後ろに飛びのいて着弾をかわし、再びケータッチを取り外してファイズの紋章とFマークを押す。
 “ファイズ・カメンライド・ブラスター”
 ディケイドの隣にファイズ・ブラスターフォームが出現した。
 ディケイドはファイナルアタックライドのカードを抜き、右腰のバックルに入れて叩く。
 “ファイナルアタックライド・・・ファファファファーイズ!”
 ディケイドがライドブッカーを構え、ファイズの「フォトンバスター」とともにまばゆい光の奔流を放った。
 大爆発が起こり、“ミミる~こと”がそれに飲み込まれる。
 ディケイドはライドブッカーの刃をシャランと鳴らした。ファイズの姿が消える。
 “・・・・・・・・・・・”
 「何!」
 爆発が収まったとき、その跡にはまだロボットが立っていた。
 「ばかな、あれを食らって!」
 「私の科学は大ショッカー以上だって言ったでしょう!」
 霊夢と戦っている夢美が笑った。「あなたにそれ以上があるかしら?」
 「くっ・・・」
 焦ったディケイド、その背後で、
 「こんにちは~」
 女性の声がした。振り向くと、空間に隙間ができており、そこから帽子をかぶった金髪の女性がカードを持って上半身をのぞかせている。
 「うわあっ!」
 驚くディケイド。女性――八雲紫は口を尖らせて、
 「もう、こんな綺麗なおねえさんをつかまえて妖怪みたいに」
 「いや妖怪だろうおまえ」
 「あん、ばれちゃった」
 「当たり前だ」
 「このカード、使ってみて?」
 紫は三枚のカードをディケイドに手渡した。「今日限りの幻想郷スペシャルカードよ?」
 「何?」
 カードを見ると、それはケータッチ用のカード、アタックライド、ファイナルアタックライドの三枚のカードで、バケツを逆さにして目玉をくっつけたような奇妙な紋章が描かれていた。
 「何だこりゃ。使えるのか!?」
 「バッチリバッチリ!」
 「信じてみるか」
 ディケイドはケータッチに新しいカードを差し入れ、浮かんだ紋章、そしてFボタンを押す。
 “モリヤ・カメンライド・スワコォ!”
 聞き慣れない音声が響き、ディケイドのヒストリーオーナメントが洩矢諏訪子のカードに変わる。同時にディケイドの傍らに当の諏訪子が出現した。
 「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃ~ん」
 諏訪子がディケイドにウインクする。「話は聞いてるよ。留守番もつまらないし、ちょっと手を貸してあげるわ」
 「だ、大丈夫なのか?」
 ディケイドは現れたのが小さな少女なので不安になった。
 「ためしにアタックライドしてみなさい」
 と紫。
 「ああ・・・」
 ディケイドは右腰に移動しているバックルにアタックライドのカードをセットして叩いた。
 “アタックライド・・・モリヤノテツノワ!”
 「いくよー」
 諏訪子が両腕を広げた。その先にフラフープ大の光る輪が出現する。
 「えいっ」
 ロボットに向け投げつける。その光輪はものすごい勢いでロボットに命中し、その両腕を斬り飛ばした。
 「何いっ!?」
 夢美が驚く。「ばかな・・・ばかなっ!」
 「おお、すごいぞ」
 ディケイドが身を乗り出す。
 「そちらの御方は小さいけれど、とってもお強い神様にあらせられます」
 紫がくすりと笑った。「納得していただけたかしら」
 「ああ、この世界には常識も何も通用しないってな」
 「それは結構です。では最後のカードを」
 「ああ」
 “ファイナルアタックライド・・・ススススワコォ!!”
 ファイナルアタックライドのカードを発動した。同時に諏訪子が後ろに飛びのきひざまづくと、パン、と拍手して地面に両手をつく。
 すると地面が見る間にどす黒く変色し、その中から赤い目をらんらんと輝かせ、燃えるような舌をちろちろ閃かせる巨大な白蛇が、ぐわっと鎌首をもたげて出現した。
 「ひっ・・・!」
 その禍々しい姿を見た夢美が思わず息を呑む。
 大蛇は、がばっとその巨大な口を広げた。諏訪子がディケイドに声をかける。
 「さあ来なさい!わかるよね!」
 「だいたい、な。はっ!」
 ディケイドが飛び上がり、伸身の後方宙返りで白蛇の口内へと着地する。その瞬間、白蛇が凄まじい勢いで真っ黒なガスを吐き出した。
 ディケイドはその勢いで“ミミる~こと”にキック、そして脚をバタバタと開閉させながら立て続けにキックを叩き込んでいく。仮面ライダー王蛇の必殺技「ベノクラッシュ」のミシャグジ様バージョンというところか。ロボットは支えきれずに吹き飛ぶが、キックの雨はなおも止まない。その破壊力に、“ミミる~こと”の体の各部が次々にはじけ飛んでいく。
 ザッ・・・!
 ディケイドが着地した、と同時に、ロボットの残っていた両脚がばたりと倒れ、それはすべての機能を停止した。
 「それじゃね~」
 諏訪子が手を振りながら姿を消す。
 「そ、そんな・・・!」
 愕然とする夢美。その頭上から、
 「これで終わりにさせてもらうわ!“夢想天生”!!」
 霊夢が最後のスペルカードを発動した。

 テーレッテー
 
 「決着・・・」
 レミリアが目を閉じてくすっと笑い、「それじゃ、戻りましょう」
 「はい、お嬢様」

 「うう・・・」
 ばったりと夢美が倒れる。
 「教授!」
 ちゆりが駆け寄る。「しっかりしろ!」
 「・・・ちゆり・・・」
 「もうわかったろ!こんなやり方で復讐したって、こんな不毛な結果になるだけだぜ!だから、もっと・・・」
 「わかった・・・わかったわ、ごめんなさい」
 夢美は両手で顔を覆った。「私が間違ってた・・・」
 「教授!」
 ちゆりが笑顔になる、しかしそのとき、
 ゴゴゴゴゴゴゴ・・・・
 巨大船が轟音を立てながら空中でどんどん倒立していた。
 「どうしたんだ?」
 ディケイドが首をかしげる。
 「ま、まさか!アポロガイストの奴が・・・!」
 ちゆりが愕然とする。
 ディケイドは苛立って、
 「何をしようとしているんだ?」
 「あの船には艦首に時空間移動のエネルギーを収束して発射できる砲がついてる。大ショッカーが改造してつけたんだけどな。それを撃つつもりだ!」
 「何っ、本当か」
 「ちょっとやりすぎね」
 紫がふうと息をついて、「お仕置きをしてあげないと」
 とスキマに消えた。

 

 “アタックライド・・・グラビティビート!”
 魔理沙ディエンドが頭上に向けて銃を撃つと、上空から光弾が降り注いで怪人を撃ち砕いた。ディエンドライバーは魔理沙のカードと相性がいいのか、だいたいのカードを読み込んでくれ
ていた。
 「これで終わりだぜ!」
 怪人たちを一掃した魔理沙ディエンド、クウガ、慧音だったが――― 
 頭上で巨大船がどんどん倒立し、その先端が光っているのを見て青ざめた。
 「まさかあれを撃つつもりか!」
 慧音が叫ぶ。「いざとなったら私の力でこの里を隠して回避することはできるが・・・どれほどの威力があるのか・・・」
 「あれだけの図体だと、相当でかそうだぜ」
 「しまった・・・ここで神奈子様の力を使うべきだった・・・」
 早苗が立ち上がろうとすしたが、それを神奈子の幻影が押しとどめた。
 “動くな。どうしてもだめならば、私がなんとかする”
 「くっ・・・」
 歯噛みした魔理沙ディエンドの隣で、
 「ちょっとお時間良いかしら?」
 不意に八雲紫の声がした。
 「今頃出てきて何の用だ」
 と魔理沙ディエンド。
 「このカードを使いなさい」
 紫は一枚のカードを渡した。見ると、三本足の烏の紋章が描かれている。
 「これは・・・」
 「跡形もなくふっ飛ばしちゃってちょうだい」
 「わかったぜ!」
 魔理沙ディエンドはそのカードをディエンドライバーにセット、
 “カメンライド・・・”
 トリガーを引いた。
 “―――ウツホォ!”
 炎が飛び出し、それが集まって霊烏路空の姿をとる。カメンライドカードは召喚の便宜上のもので、現れた空が少女鉄仮面伝説のように仮面をかぶっていたわけではない(見てみたい気もするけど)。
 「う、うにゅ!?」
 空はいきなり呼び出されて面食らっている。「な、何?何?」
 データコピーではなく、モモタロスや南光太郎などのように本人を召喚したようだ。
 「上を見ろ」
 「だ、誰だあんた。上・・・・?うわ!」
 「あいつはこれから地上を砲撃して、地霊殿にまで穴を開けて攻めてくるつもりらしいぜ。どうする?」
 それを聞いた空は目の前の人物(魔理沙ディエンド)が誰であるかはどうでもよくなったようで、真剣な表情になって言った。
 「・・・・ぶっ飛ばす!」
 「おくうは賢いな。じゃあ一緒にやろうか」
 「おお!」
 空が船めがけ右手の柱を向ける。先端から銀色の針が立ち、リミット解除を知らせた。
 「こっちもいくぜ!」
 ディエンドのファイナルアタックライドカードを入れ、スライドさせる。
 “ファイナルアタックライド・・・”
 すると、ディエンドのカード、そして魔理沙のすべてのスペルカードも飛び出し、光となってディエンドライバーの前に展開した(ただし空は吸収されなかった)。
 「―――撃てっ!!!」
 “―――ディディディディエーンド!”
 「爆符“ギガフレア!”」
 凄まじいエネルギーの奔流が光の束となり、相乗効果でさらに巨大な光の柱となって船に襲いかかる。
 「な、何だとおおおおおお!?」
 艦橋のアポロガイストはみるみる周囲が光と灼熱に包まれていくのに仰天し、オーロラの壁の中に逃れた。
 巨大な船はそのまま光に飲み込まれ、消し飛んでしまった。
 「よし!」
 変身を解いた魔理沙がガッツポーズする。
 「やったー!」
 空も喜びながら姿を消してゆく。
 「いやー、なかなか60分の放送枠に収めるのは難しいわね・・・」
 紫はひとりごちて、
 「皆さん、おつかれさまでしたー」
 とスキマに消えていった。
 「まさか・・・今回のはアイツの仕業だったのか」
 魔理沙が紫のいたところを睨んで言った。「あとで懲らしめにゃ・・・」
 「魔理沙!大丈夫?」
 そこへ、霊夢たちがやってきた。
 「一件落着だぜ」
 魔理沙は親指を立ててみせた。

 (エピローグはもうちょっとまってー、あるいは各自で想像してー)

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