(CM終了、Bパート)
「待て!攻撃するな!」 フィリップの叫び声に、空はびくっと動きを止めた。 「え?」 空が振り向いたとき、その空間の裂け目から、一人の女性が仰向けに倒れ込んできた。 フィリップが急いでその女性を抱き起こす。 それは、紫の服をまとった長い黒髪の女性だった。 「黒須志津子、だね」 フィリップはその女性に声をかける。 「・・・・あなたは・・・・・・」 女性は荒い息をつきながら、フィリップを見上げて声を絞り出した。 フィリップは静かに言った。 「ぼくは探偵だ。風都の連続失踪事件を調べている」 それを聞いた女性は大きく嘆息して、 「ああ・・・・・良!」 と言った。「良・・・どこにいるの・・・!」 「黒須良を・・弟を探しているのか」 「そう・・・良・・・わたしのせいで・・・あんなことを・・・わたしがあの人のことを忘れられなかったばかりに・・・わたしのせいで・・・」 女性――黒須志津子は涙を流した。「その上・・・良の前から姿を消して・・・良に謝るまでは・・・私は・・・どうしても・・・」 「・・・・・・・・・」 フィリップは悄然となった。黒須良が姉への罪悪感からドーパントとして行動しているのと同じように、黒須志津子も弟への罪悪感から、彼に会って謝りたいという一念で自己の強大な能力を制御し、ここまできている・・・ (肉親の情というものはここまで強いものなのか) 「なんだかかわいそうな人・・・」 空がそれを見下ろしながら言った。事情は知らないながら、感覚でわかるようだ。 「もう一度・・・あちらへ・・・今度こそ・・・良に・・・!」 志津子は起き上がろうとした。 「無理だ!かなり消耗している。しばらく休むんだ」 フィリップが制止しようとしたが、 「止めないで!私は・・・私は・・・!」 それを振りほどこうとする。 「くっ・・・!」 その時、 “先ほどはご挨拶でしたね・・・!” 「!」 ウェザー・ドーパントが姿を現した。 「井坂深紅郎!」 フィリップの声に、空が毅然とした表情になった。 「出てきたな・・・今度こそやっつけてやる」 “化物め。先ほどは不意を突かれたが、今度はそうは行かんぞ” ウェザーは笑った。 「えらそうに!」 空は右手の筒をウェザーに向けた。 「くらえ!」 光の束がウェザーめがけ発射される。しかし、それはウェザーの直前で空間のスキマに飲み込まれた。 「!」 驚いた次の瞬間、それが空の背後から飛び出し空を直撃する。 「あうっ!?」 前方に吹き飛ばされる、そこへ、 “ふん!” ウェザーの激しい雷が正面からカウンターで襲った。 「うああああああっ!」 空はまともに食らい、ばったりとうつ伏せに倒れる。 「あ・・・・う・・・ぁ・・・」 ウェザーの背後から、ボーダー・ドーパントが現われた。 ウェザーはフィリップに言った。 “私はあなたに危害を加えるつもりはありません。一緒にあちらに帰るのです。不本意ではありますがね” 「何を企んでいる、井坂・・・」 “ね・・・姉さん!?” 「何?」 “姉さん・・・姉さん!!” ボーダーがぶるぶる震えながら、フィリップたちのほうへ歩いてきた。 “姉さんだと?” ウェザーがフィリップの抱き起こしている女性に目をやる。そして驚いたように、 “黒須志津子・・・・・・生きていたのか!” “姉さん・・・・姉さん・・・・!!」 ボーダー・ドーパントの姿が黒須良の姿に戻る。その足元にボーダーメモリが落ちた。 「・・・・・良!!」 黒須志津子が目を見張った。「良・・・・やっと・・・やっと会えた・・・・・!」 「姉さん!」 良は志津子を抱きしめて、「ごめんなさい!ぼくが・・・!ぼくのせいで姉さんはこんなことに・・・ごめんなさい・・・!」 ぼろぼろと涙を流し、嗚咽しながら姉に謝る。 「良・・・・!私こそ・・・・!私が弱いばっかりに、あなたをこんなにしてしまって・・・・悪いのは私・・・!ごめんなさい、良・・・・!」 弟の姿を見た志津子も、激しく泣きながら弟に詫びた。 「・・・・・・・」 フィリップはその姉弟の情に感動を覚えたが、 “生きていましたか・・・・黒須志津子・・・・!!” ウェザーがボーダーメモリを持って近づいてきていた。 “最適の適合者と思っていたのに消滅・・・代わりに弟で実験していましたが、生きていたとは・・・・生身で力を制御するまでになっていたとは・・・” 「井坂!」 “面白い・・・今のあなたにこのメモリを差し込んだらいったいどうなるのか・・・想像しただけでわくわくします・・・・!!!” 「姉さんに触れるな!」 黒須良が姉を抱いて逃げようとする、しかし、 “もう貴様に用はない!” ウェザーは良に一撃を加えた。 「ぐ!」 良は昏倒する。 「良!」 志津子が悲鳴を上げた。 “さあ・・・” ウェザーがメモリのスイッチを入れる。 “ボーダー!” 志津子の額にコネクタが出現した。 “さあ・・・その力を見せなさい!!” メモリを突き出そうとする、その腕にファングメモリが一撃を加えた。 “ぐっ・・・・邪魔はやめてもらいましょう!” ウェザーが竜巻を起こし、フィリップを吹き飛ばす。 「うわっ!」 吹き飛ぶフィリップ、ファングメモリはフィリップの身体を最優先し、素早く回り込むとその体を受け止めて地上に下ろした。しかし、それによってウェザーと志津子は完 全に二人きりになってしまった。この場所からではとうてい手が出せない。 「やめろ井坂!!」 フィリップが叫んだ、その時。 空間からいきなりメリー、蓮子、翔太郎、こいし、燐の五人が飛び出してきて、その勢いのままウェザーに激突した。 “なあ・・・っ!?” 完全に不意を突かれたウェザーがひっくり返る。 「いてて・・・・あ、井坂!」 翔太郎が下敷きになっているウェザーを見て驚く。 「あ、帰ってきた」 こいしがひょいっと着地する。 「お、おくう!?どうしたの!?」 こいしと同じく着地した燐は、空が倒れているのを見て驚いた。 「な、何か修羅場じゃない?」 翔太郎と同じくウェザーの上に乗っかっている蓮子はぽりぽりと頬をかきながら言った。 「ちょっと余裕があったから方向転換してみたら、何かすごいところに出てきたみたいね。でもグッドタイミング?」 メリーは相変わらずの暢気さで笑った。 “いつまでも乗っかるなー!” ウェザーが起き上がる。三人は放り出されて地上を転がったが、すぐに起き上がった。 「翔太郎!君も来たのか!」 鮮やかな場面転換にフィリップが思わず笑顔になる。 「ああ、来たぜフィリップ!変身だ!」 「ああ、翔太郎!」 翔太郎がダブルドライバーを装着する。同時にフィリップの腰にもドライバーが出現した。 翔太郎はウェザーを睨みつけて言った。 「姉と弟の絆を弄びやがって・・・おまえは絶対に許せねえ!」 ジョーカーメモリを抜き、スイッチを入れる。 “ジョーカー!” フィリップがサイクロンメモリを抜き、スイッチを入れる。 “サイクロン!” 同時にメモリを構え、 「「変身!!」」 “サイクロン!ジョーカー!” 翔太郎が仮面ライダーW・サイクロンジョーカーに変身した。 「「さあ、お前の罪を数えろ!!」」 |
“どこまでも邪魔を・・・!” ウェザーが憎憎しげにつぶやく。 「今度こそ殺してコレクションにしちゃうからね」 その後ろでこいしがくすくすと笑う。 「よくもおくうをやってくれたわね・・・」 燐も殺気を漲らせてウェザーに対峙した。 蓮子とメリーは倒れたフィリップのほうへ走り、彼を引っ張って安全なところに隠れる。 “くっ・・・” ウェザーが井坂深紅郎の姿に戻る。 「観念したのか!」 Wは井坂の意外な行動に戸惑った。 「くっくっく・・・こうなっては仕方ありません」 井坂は目を閉じた。 「楽しみは諦めましょう・・・」 そして、二本のメモリを両手に持ち、掲げた。 「“この力”でも、“あの男”を乗り越えるに充分です・・・気が変わりました、今ここでお前達を葬ることにしましょう!」 「なに!」 井坂はその二本のメモリを同時にコネクタに突き刺した。 “ウェザー!ボーダー!” 井坂の姿がいつものウェザー・ドーパントのものよりもさらに禍々しいものに変身した。 「二本挿し・・・だと!?」 “くっくっく・・・・・・・” ウェザー・ボーダーが不気味な笑い声を上げる。 “この力・・・・体の中から湧き上がってくる力・・・・・圧倒的ではありませんか・・・!” ウェザー・ボーダーの背後の空間が揺らぎ、瞼が開くようにぐわっと空間が裂け、その向こうに黒と紅の不気味な世界が覗いた。 「・・・・・・!これって・・・・!」 燐が青ざめて後ずさる。 「あの・・・スキマ妖怪・・・の・・・!」 “ふん!” ウェザーボーダーが両腕を突き出した。同時に周囲の地面が裂け、多量の光弾が撃ち上がる。 「うあっ!」 「きゃああ!」 「~」 Wと燐がまともにくらって転倒した。こいしはふらっとよろめいてそれらすべてをかわす。 “ホラホラホラホラホラホラホラホラホラホラホラホラァーッ!” 凄まじい密度の光弾がウェザーボーダー背後の空間から現われ、三人に襲いかかった。 「ぐあ!」 「にゃああああ!」 Wと燐がそれに飲み込まれ、吹き飛ばされる。 「・・・・・」 しかし、こいしはその光弾の中をどうやったのかすり抜け、ウェザーボーダーの至近距離に入っていた。 “!!” 「死ね」 こいしがウェザーボーダーの心臓めがけ手刀を叩き込んだ。 手刀がウェザーボーダーを貫いた、と見えた瞬間、その姿が消える。 「!」 同時にこいしの周囲に黒い空間が開き、その中から無数の腕が飛び出してきてこいしの体を絡め取った。 「くぅ・・・っ!」 こいしが苦悶の表情を見せる。 “化物め・・・しかし、捕まえたぞ” ウェザーボーダーが姿を現した。 “ふん!” 凄まじい轟音とともに雷がこいしを直撃する。 「・・・・・・・・!!」 こいしがぐったりとなった。 “ははははは” スキマからの手がこいしを投げ捨てる。こいしは地面に叩きつけられた。 「う・・・・うっ・・・」 かすかにうめき声が聞こえる。命は大丈夫なようだったが、すぐには動けそうにない。 「こいし・・・様・・・っ・・・」 燐が起き上がろうとするが、そこへ連続で直撃弾を食らい、吹き飛ばされて転がる。 「くそ・・・っ・・・」 Wがなんとか起き上がったが、 ボォーッ 正面に突如疾走するSLが出現した。 「ぐあああ!」 Wは凄まじい勢いのSLに跳ね飛ばされ、大きく吹き飛んで地面に叩きつけられ、転がった。 「う・・・う・・・」 “どうです。私の力は・・・・・この力ならば、あの男にも・・・・” ウェザーボーダーがゆっくりとWの方へ歩いてゆく。 |
「このままじゃ、翔太郎さんが・・・!」 蓮子が身を切られるような声を上げた。「何とか・・・しないと!」 「ちょっと、蓮子」 その時、メリーが蓮子をつついた。 「何よ・・・!」 蓮子がメリーのほうを向いたとき、その目の前にはダブルドライバーがあった。メリーが手にしている。 「え・・・!これって・・・・!?」 驚いた蓮子にメリーは、 「さっきスキマに入って、本当は別のところに出るつもりだったんだけど、何かを感じてこっちへ方向転換したときに、これが体に当たって・・・思わず持ってきちゃったんだけど」 と言った。 「これ・・・!」 蓮子はそのダブルドライバーをメリーの手から取って、「翔太郎さんのと・・・ほとんど同じ・・・!」 そしてWのほうを見た。そして、意を決したように立ち上がる。 「蓮子!危ないわ!」 メリーが鋭い声で言う。しかし蓮子は、 「翔太郎さんを助ける。これがあれば・・・・・・」 堅い意思を秘めた、毅然とした視線を前に向けていた。 メリーはやれやれと首を振って、 「こうなったら何を言っても聞かないわね。わかった、つきあうわ。天国でも、地獄でもね」 「ありがとう」 蓮子はメリーを振り返ってくすりと笑った。「行きましょう」 |
“さあ、決着です。死になさい・・・” ウェザーボーダーがWを見下ろした。 「くっ・・・!」 Wが歯噛みする。 ウェザーボーダーが手をゆっくりと上げ、振り下ろそうとした、その時、 「待て!!」 蓮子の鋭い声が辺りに響き渡った。 “!” ウェザーボーダーがはっとして顔を上げる。そこには、蓮子とメリーが立っていた。 蓮子の手には、ダブルドライバー、正確にはそれによく似たドライバーが握られている。 「それは・・・!」 Wが驚く。 “小娘ども・・・そのおもちゃで何をするつもりだ” ウェザーボーダーはせせら笑った。 「おもちゃだって」 メリーが眉をひそめた。「だったら、どうする?」 「その時に考えるわ!」 蓮子はドライバーを腰に当てた。するとベルトが伸張し、腰に巻きつく。同時に、メリーの腰にもドライバーが出現した。 「ほら、本物よ!」 「あ、蓮子と感覚がつながったわ」 メリーが楽しそうに言った。「でも、普段から蓮子と心はひとつだけどね」 「無駄口はいいから!」 蓮子は苦笑して、腰のアタッチメントからガイアメモリを抜き出す。“M”と記された青緑色のメモリだった。 「はいはい」 メリーもガイアメモリを抜き出した。“T”と記された、臙脂色のメモリ。 「行くわよメリー!」 蓮子はメモリのスイッチを入れた。 “ミラクルゥ!” 野太いガイアウィスパーが響く。通常のマダオ声とは違う。形容するなら、ドズル声だった。 「行きましょ、蓮子!」 メリーもメモリのスイッチを入れた。 “タイフーン!” 「変身・・・できるのか!」 Wが目を見張った。 「大丈夫!私達も・・・!」 蓮子がミラクルメモリを構えた。 「二人で一人の・・・」 メリーがタイフーンメモリを構える。 「「秘封倶楽部だから!!変身!!」」 見事なシンクロで叫ぶやメリーがタイフーンメモリをセット、蓮子は転送されてきたメモリを押し込むとミラクルメモリをセットし、ドライバーを勢いよく左右に押し広げた。 “タイフーン!ミラクルゥ!” 臙脂と青緑の閃光が走り、蓮子は巻き起こる旋風とともに仮面ライダーW・タイフーンミラクルに変身した。メリーがその場に倒れる。 “変身しただと!” ウェザーボーダーが驚く、それを下からサイクロンジョーカーが蹴り上げた。 “ぐあ!” ウェザーボーダーがよろめいた隙にサイクロンジョーカーは素早く転がってタイフーンミラクルの側に立った。 「なかなか様になってるぜ」 と翔太郎。 「あ、ありがとうございます!」 蓮子が照れたように頭をかいた。 “そんな紛い物が・・・私にかなうと思っているのか!” ウェザーボーダーの背後の不気味な空間が蠢動を始めた・・・その時、その空間が突然閉じてしまった。 “何!?” ウェザーボーダーが周囲を見回す、その視線の先に、 「・・・・・・・」 黒須志津子が立ち上がり、ウェザーボーダーに手を突き出していた。 “お・・・・おまえが・・・・!” “黒須志津子!” フィリップが声を上げた。“彼女が井坂のボーダーの力を封じている!” “チャンスよ蓮子!” メリーが声をかける。 「うん!」 タイフーンミラクルが風とともに飛び上がり、ウェザーボーダーに飛び蹴りをかけた。 “ぐあ!” ウェザーボーダーがよろめく。しかしその足を掴んで、思い切り投げ飛ばした。 「きゃ!」 “えーとっ” その時、メリーがタイフーンミラクルの体を動かし、タイフーンメモリをドライバーから抜くと、“D”と記された紅のメモリを取り、ドライバーに挿入した。 “ドリーム!ミラクルゥ!” タイフーンミラクルの半身が紅に変わり、ドリームミラクルにチェンジする。同時にその体が中空に停止した。 “何!” 「飛べる!?」 ウェザーボーダーとサイクロンジョーカーが驚く。 “じゃ、いくわよ” 「わかった!」 ドリームミラクルが腰についていた祓串のようなロッドを手にし、ウェザーボーダーめがけ急降下する。 “ぬう!” ウェザーは飛びのいてその一撃をかわしたが、着地したドリームミラクルはすぐさま身を翻して飛翔するやロッドを一振り、同時にロッドから陰陽玉が連なって飛び出し、ウェザーボーダーに一撃を加えた。 “ぐは!” ウェザーボーダーがよろめく。 「まだまだ!」 ドリームミラクルはさらに身を翻してロッドを振る。連なった陰陽玉が大きく鞭のようにしなり、死角からウェザーボーダーを撃った。エタニティ・エイトみたいな感じか。 “ぐうっ!” ウェザーボーダーは転倒する。 「おお」 “飛行能力があるとは。それにすごいパワーだ” 翔太郎とフィリップも驚く。 “貴様・・・許さん!” ウェザーボーダーが両手を思い切り握り締める、と、その周囲に竜巻が巻き起こり、稲妻がその中に閃き始めた。 「させるか!」 ドリームミラクルはさらにロッドを振ったが、ウェザーボーダーに触れた瞬間、電撃が陰陽玉を伝ってドリームミラクルを襲った。 「きゃああっ!」 電撃を受け、ドリームミラクルは吹き飛び、地面に叩きつけられる。 “ばかめ!” ウェザーボーダーが嘲るように笑った。 「う・・っ・・・まず・・・」 怯んだ蓮子に、 “まだよ!これこれ!” メリーの声がし、ドリームミラクルは黒と紅二色の“L”、そして青と桃色の“A”と刻印されたガイアメモリを取り出した。 そしてドリームとミラクル二本のメモリを抜き、セットする。 “ライトニング!オーロラァ!” ガイアウィスパーとともに半身が黒と紅、もう半身が青と桃色に変わり、ドリームミラクルはライトニングオーロラにチェンジした。そして腰にマウントされていた剣の柄を抜く。するとレーザーブレードのように青白く輝く刀身が伸びた。 “死ね!” ウェザーボーダーがライトニングオーロラめがけ雷撃を放つ。 “そっくりお返しするわ!” ライトニングオーロラが高く剣を掲げた。すると、その剣にウェザーボーダーの雷撃が吸収され、逆にその剣に帯電する。 “蓮子!” 「たっ!」 ライトニングオーロラが剣を一閃した。剣から青白い光が伸び、まるでオーロラのような青白い巨大な刃となってウェザーボーダーを切り裂く。さらに自身の放った雷にさらに上乗せされた電撃が全身を駆け巡った。 「ぐあああああ!」 爆発が起こり、ウェザーボーダーが吹き飛ぶ。 「こちらも負けていられないな」 “ヒート!メタルゥゥ!” サイクロンジョーカーがヒートメタルにチェンジし、メタルシャフトを振り回して打ちかかる。ライトニングオーロラもオーロラブレードを振りかざして斬りかかった。 「ぬおおお!離れろ!」 ウェザーボーダーが両腕を開いた。その周囲に冷気が立ちこめ、巨大な雹が機関銃のように二人を襲う。 「うわっ!」「きゃあ!」 二人が吹き飛ばされる。 “死ね!黒須志津子!” ウェザーボーダーは黒須志津子に雹の雨を放った。 「危ない!」 翔太郎が叫んだ、その時、 「うぐっ!」 黒須良が飛び込んで姉をかばい、雹を受けた。 「ぐ・・・っ!」 良はぎゅっと姉を抱きしめ、直撃を食らっても微動だにしない。 「良・・・・!」 「姉さん・・・負けないで・・・あんな・・・やつに・・・っ!」 「うおおおおおっ!井坂ああああっ!!」 ヒートメタルが二本のメモリを取り出す。 “ルゥナァ!トリガァァァ!” ルナトリガーにチェンジした。そして、 “こっちもよ!” メリーがドリームメモリと“S”と記された黒いメモリを取り出し、差し替えた。 “ドリーム!スパァァク!” ライトニングオーロラが紅と黒のドリームスパークに変身、右手にミニ八卦炉が出現した。 二人が同時に射撃を開始する。その光弾はホーミングで雹に向かい、そのことごとくを撃破した。 「お返しだ!」”お返しよ!” “ヒート!トリガァァァ!” “ライトニング!スパァァク!” 炎と雷の奔流を同時に食らい、ウェザーボーダーは爆発とともに転倒した。 ガチャンッ! 破壊音とともに、ボーダーメモリがバラバラになって転がる。 “し、しまった・・・・・!ぐああああ!” ウェザーボーダーの姿がウェザー・ドーパントに戻ってしまった。 “サイクロン!ジョーカー!” 「さあ、フィニッシュだぜ!」 翔太郎の声に、ライトニングスパークは、 “タイフーン!ミラクルゥ!” タイフーンミラクルにチェンジした。 「マキシマムドライブ、わかるな?」 「えっと」 “まかせて!” 「OK!」 サイクロンジョーカーが右腰にジョーカーメモリをセットする。 “ジョーカー!マキシマムドライブ!” タイフーンミラクルはミラクルメモリを抜き出し、右腰にセットした。 “ミラクルゥ!マキシマムドライブゥ!” 「いくぜ、“ライダー・マキシマムクルセイド”だ」 「は、はい!」 サイクロンジョーカーとタイフーンミラクルが高く飛び上がる。すると凄まじい嵐が巻き起こり、ふたつの竜巻がウェザーを襲った。 「うおああああ!」 ウェザーは自らの竜巻でそれを吹き飛ばそうとしたが、ひとたまりもなく蹴散らされ、逆に二つの竜巻に巻き込まれて木の葉のように翻弄され、空中に放り出されて受身もとれずに落下してゆく。 二人のWライダーはウェザーの上空でキックの体勢に入った。 「「「「“ライダー・マキシマムクルセイド”!!」」」」 四人の叫び声と同時にサイクロンジョーカーが半分に分割、タイフーンミラクルがきらめく星屑とともに無数に明滅分身する。そしてサイクロンジョーカーが「ジョーカーエクストリーム」で、タイフーンミラクルが「ミラクルメテオシャワー」で同時に急降下、落下するウェザーに交差状にキックを叩き込んだ。 「X」の形に閃光が走り、 「ぎゃああああ!」 ウェザーが爆発する。 「やったか!」 「き・・・さま・・・ら・・・絶対・・に・・・」 その煙の中から井坂深紅郎が姿を現した。そしてばったりと倒れる、その前に空間のスキマが現われ、彼の姿を飲み込んだ。 「消えた!?」 サイクロンジョーカーがメモリを抜き、翔太郎の姿に戻る。 「ま、ここで倒したら照井に文句言われちまうしな」 タイフーンミラクルもメモリを抜き、蓮子の姿に戻った。 「いったい誰が・・・」 蓮子が辺りを見回した。そのとき女性の声で、 「他世界の彼がここにいてはいろいろと不都合がありますから」 「まあそうだが・・・って」 翔太郎は驚いて周囲を見回した。「誰だ!?」 周囲には誰も居なかった。 「おそらく、“八雲紫”・・・この幻想郷の賢者の一人、境界を操る存在だ」 フィリップとメリーがやってきた。フィリップが本をひもといている。 「おそらく、そのドライバーも彼女の仕業だろう」 「それよりも、あっちを・・・!」 メリーが黒須姉弟のほうを指差した。 |
「良!良!!」 黒須志津子が黒須良を抱き起こして叫んでいた。良はいくつもの雹の直撃を受け、ぐったりとしている。ただ、意識はあった。 「姉さん・・・無事でよかっ・・・た・・・」 良は弱々しく言った。 「しっかりして!良!」 「ぼくは・・・もう・・・・メモリの副作用で・・・う・・・」 良の眉間にコネクタの形がどす黒く浮かび上がっていた。 「よかった・・・姉さんに・・・逢えて・・・謝ることが・・・もう、ぼく・・・は・・・」 「そんなことないわ!しっかりして!良!死んだらだめ!私のお願いを聞いて!」 「姉さん・・・ありがとう・・・」 翔太郎と蓮子たち、そしてこいし達が駆けつけた。こいしたち三人はかなり痛めつけられていたが、もうほとんどけろっとしていた。すごい回復力だ。 「大丈夫か!」 「良さん!しっかり!お姉さんをひとりにしちゃだめ!」 翔太郎と蓮子が声をかける。 「あたい、ちょっと竹林にひとっ走りしてきます!」 燐が猫車を取り出した。「あそこのお医者さんならきっと・・・!」 「そうね」 こいしがうなずき、黒須良を抱き上げた。「私達の恩人だしね」 そして、猫車に乗せる。はなはだ縁起の悪い図だが、この際贅沢は言えない。 「そんじゃ行ってきます!」 燐はあっという間に走り去っていった。 “・・・黒須良は竹林の医者によって一命を取り留めた。どういう処置をしたのかはわからないが、メモリコネクタを完全に排除、副作用を止めたようだ。フィリップはその世界の『地球の本棚』にアクセスして自分で理解しているようだったが・・・。” “オレ達は黒須志津子の能力で元の世界に戻った。蓮子ちゃんとメリーちゃんもその世界と同時代の京都の住人で、無事帰っていった。” “照井竜は、その世界の町に居た。そして驚いたことには、その町に御影英彦とその妻がいたことだった。黒須良の初の能力使用だったが、恨みの大きさのため、いきなりここへ空間をつなげていたようだ。二人は命は無事だったが、何か非常な恐怖に遭ったようで、別人のようになっていた。照井にその間の事を聞こうとしたが、例によって「オレに質問するな」だった。” “黒須良は、御影英彦が生きていたので罪状は殺人未遂罪となるだろう。動機が動機なので、酌量されればいいが・・・量刑はどうあれ、姉の願いどおり、強く生き続けてほしい。 “黒須志津子は、まだ完全に能力を制御できないようで、オレたちの世界にもまだ時々しかいられないらしい。しかし、どこにいても、弟のことを案じ、その幸せを願い続けているだろう。人の思いは、たとえ世界が違っても届く。オレはそう信じている・・・。” 「お仕事、お疲れ様です」 タイプライターを打つ翔太郎にコーヒーが出された。 「ああ、ありがとう」 翔太郎は下を向いたままカップを取り、一口飲んだ。 「ん、美味しいな・・・って!?」 翔太郎は驚いて顔を上げた。 そこには宇佐見蓮子が立っていた。 「なっ」 翔太郎はびっくりして立ち上がった。「どうして蓮子ちゃんがここに!?」 「メリーが、この近くにスキマが残ってるって教えてくれたんで、無理言って、ちょっと連れてきてもらいました」 蓮子はちょっと顔を伏せ気味に言った。「すぐに帰らないといけないですけど」 「そ、そうなんだ」 翔太郎は落ち着いて、「今回は災難だったね」 と言った。 「いえ」 蓮子は微笑んで、「すごい体験ができましたし、それに・・・」 そして、耳打ちするような仕草をした。 「?」 翔太郎は耳を近づける。 蓮子は大きく息を吸い込んで、 「・・・・・・素敵な探偵さんに逢えましたから!」 と言い、そっと翔太郎の頬に唇を触れた。 「・・・・!」 翔太郎は仰天、真っ赤になって蓮子のほうを向いた。 「それじゃ、失礼します!ありがとうございましたっ!」 蓮子は照れ隠しのように大声を上げ、出口の方に走っていった。 そのドアが開き、買い物から帰ってきた亜樹子が姿を見せた。 「あれっ、蓮子ちゃん!?」 「亜樹子さん、さよならっ!」 蓮子はその横をすり抜け、階段を駆け降りていった。 「ちょっ、蓮子ちゃん!?翔太郎くん、何があったの!?」 「いったい何の騒ぎだい翔太郎」 奥からフィリップが顔を覗かせたが、二人が見たのは、「真っ白な灰によ・・・」状態で椅子に座っている翔太郎だった。 「ちょ、翔太郎くん!?」 「翔太郎!」 二人は翔太郎に駆け寄っていった。いや、行こうとしたが、フィリップのほうはいきなり背後から手を引っ張られ、 「フィリップっ」 こいしに頬に口付けされ、目を丸くした。 |
(おわり)
照井竜があのあとどのような目に遭ったのかは劇場版で。
あ、いや冗談です