東方で必殺やってみた


 


 
(BGM:遍参)
 町外れの廃寺。
 「―――これが仕事料よ」
 幽々子は一同の前に小判を一枚と朱銀を六枚広げる。
 「相手は、○○屋番頭某、遊郭・△△楼元締某と花魁某、そして奉行所筆頭与力某」
 「大物ねえ。でも、受けたわ」
 霊夢が小判に手を伸ばすが、その手を魔理沙の箒が押さえる。
 「当然のように小判を取ろうとするな」
 霊夢はむくれて、
 「何よ。あの娘の祈祷から何から、今回一番骨折ったの私なんだから。
私がもらってもいいじゃない」
 「僕があとで両替して等分にしよう」
 と霖之助。
 「それがいいわね」
 とアリスがうなずく。
 「えー」
 不満そうな霊夢。
 「下らないことで時間を使わないで下さい」
 妖夢が楼観剣で床を小突いて、
 「ところで洋館の小間使いは?」
 「お嬢様主催のパーティーがあるから今回は休むって」
 と霊夢。「ちょうどいいじゃない?人数的に」
 「そうですね」
 妖夢は立ち上がる。「配分はあとということで・・・行きましょう」
 「いつもいつもせっかちなんだから」
 霊夢も立つ。それに続いて他の面々も立ち上がり、廃寺を出て行く。
 彼女たちが立ち去ると、幽々子はすうっとその姿を消す。


 (BGM:あゆのかぜ)
 博麗神社。霊夢が金色に輝く針を磨き終え、月光にかざして指の間でくるくるっと回し、
袖に仕舞い込む。そして棚から御札を抜き取ると立ち上がり、神社を出て行く。

 アリスの人形店。アリスが手袋をはめ、人形を携えて店を出て行く。

 香霖堂。霖之助と魔理沙が連れ立って店を出て行く。

 夜の通り。月光の薄明の中を、右手に傘を差し、左手に楼観剣を携えた妖夢が歩いてゆく。


(静寂。トランペットの前奏ののち、ティンパニに導かれてBGM:東方妖恋談・萃夢想ver)
 遊郭・△△楼。○○屋番頭が密談の後、裏口からこっそりと出てゆく。
道向かいの屋根の上から静かに見下ろす霊夢。針を取り出すと、ゆっくりと口に挟み、姿を消す。
 その背後からアリス。手には人形を携え、無表情。

 番頭、人目をはばかり、人気のない川沿いの道を店へ戻ってゆく。
「もし、そこの方」
その背後から霖之助が声をかける。
 驚く番頭。振り向くと、
「落し物ですよ」
 霖之助が財布を番頭に差し出す。
「あっと・・・い、いや」
 番頭は自分の懐に手を入れて、
「いや、自分のはここにあります。他人のでしょう」
「いえ、そんなはずはありません」
 霖之助は財布から一枚の紙を抜き出し、広げて見せる。
そこには、死んだ娘の似顔絵が描かれている。
「この娘、あなたよくご存知でしょう?」
 番頭は青ざめて、
「お、おまえは!」
 同時に霖之助が身を翻す、その向こうに八卦炉を構えた魔理沙の姿。
 八卦炉から一条の閃光が飛び、番頭の体を貫く。
 川の中へ真っ逆さまに落ちる番頭。
 霖之助と魔理沙、そのまま姿を消す。


 △△楼内。客が帰り、一息つく花魁。
 開いた窓。その向こう、向かいの屋根にアリスの姿。人形は持っていない。
右手をまっすぐ前に突き出し、掌を伏せた状態で立っている。
 花魁がふと気づくと、いつの間にか枕元に黒い服の可愛らしい人形が置いてある。
 金髪に赤いリボンをつけた洋風の人形で、目を閉じ、胸の前で両手を合わせている。
 首をかしげる花魁。しかしその愛らしさに思わず手を伸ばす。
 アリス、掌を返し、ぎぎぎぎ・・・と五指を曲げていく。
それに応じて人形がゆっくりと目を開きながら両腕を広げ、その胴体から鋭い刃が伸びる。
「ひっ・・・」
 驚く花魁、同時にアリスが左手を突き出して右手に交差させると、
一気に両腕を真横に広げる。
キィンという甲高い音とともに人形が花魁に飛び掛り、その喉に抱きつく。
 刃が喉を深く抉る。
 花魁、小さく呻き、そのまま前のめりに倒れて動かなくなる。
 アリス、右手を大きく回す。人形がそのもとに戻り、アリスはそれを左手で受け、
屋根の上から消える。

 その部屋へ元締が入ってくる。
 倒れている花魁を見つけ、眠っているのかと抱き起こし、青ざめる。
 声を上げようとしたとき、天井から一枚の御札が飛んできてその口と鼻をふさぐ。
 目を白黒させてそれをはがそうとしたとき、天井から霊夢が飛び降り、
番頭の背後に立つと左手で肩口を掴み、右手で口に挟んでいた針を抜き放つと
くるんっと一回転させ、元締の耳に突き入れる。
 ぶるっと震える元締。
 霊夢、針をぐりんと回す。同時に元締の目がぐるんと白目になる。
霊夢、突き入れた針をすいっと抜く。元締、力なく倒れる。同時に札が口からはがれる。
霊夢、それを拾い上げると部屋の明かりを消し、姿を消す。

(BGM:夏明き)
 筆頭与力、勤めを終えて奉行所を出、帰途に着く。
 その途中、向こうから一人の少女が歩いてくるのに気づく。
右手に傘を差し、左手にはその身に不釣合いな長刀を手にしている。
その表情は傘で見えない。
 思わず足を止める、少女はなおも決然とした足取りで近づいてくる。
 与力、刀に手をかける。
「止まれ」
 鋭い声で威嚇する。しかし少女は止まらない。
「斬るぞ」
 止まらない。
 鯉口を切る。抜こうとしたとき、少女が傘を投げ上げる。
 与力が一瞬気を取られた次の瞬間、妖夢は恐るべき速さで与力の懐に飛び込み、
楼観剣の柄頭で鳩尾を突き上げる。
「ぐう・・・・!」
 呻きとともに動きが止まる与力。
 妖夢は身を翻すと、鞘に入ったままの楼観剣で与力の項に強烈な一撃を加える。
そしてうつぶせに地上に打ち倒すと、鞘で与力の体を押さえつけて動きを封じ、
右手ですらりと鞘から楼観剣を抜き放つ。
そして高く振りかぶり、もがく与力の首に刃を振り下ろす。
チュン、という小さな音と同時に与力の体がばたっと動きを止める。その上に傘が落ちてくる。
妖夢は鞘を持ち上げて納刀、落ちてきた傘を受け、
与力の両断された部分を隠すように置くと、そのまま立ち去ってゆく。


 
(BGM:甲論乙駁)
 「妖夢、おつかれさま〜」
 白玉楼、帰ってきた妖夢を幽々子と紫が出迎える。
 「どうだった?首ちょんぱ?」
 と紫。
 「え、ええ・・・おっしゃったとおりに」
 と妖夢。「でも、斬るだけでいいじゃないですか」
 「こっちは面倒な規制がないし、ただ斬るだけじゃねえ。エキセントリックに」
 「いやいや紫様、規制がないといっても残酷シーンはだめでしょう。見えないように傘で隠しましたけど」
 「傘から足がついたらどうするの〜」
 と幽々子。「半分人間なんだし」
 妖夢、
 「紫様が手を回してくれればいいでしょう。ていうかこれほとんど楽屋話じゃないですか」
 「そりゃ、お芝居なんだし」 
 幽々子にっこり。妖夢、
 「芝居中に言わないでくださいよ・・・ザ○ングルじゃあるまいし」
 「それよりも、ごーはーんー」
 「ごはんー。人間を解体したばかりで返り血も生々しい妖夢ちゃんの血煙三分間クッキングー」
 「紫様まで・・・はいはいわかりました。待っててください・・・」
 妖夢、台所へ小走りに姿を消す。

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