掛けまくも綾に畏き博麗の大神の大前を拝み奉り、また天照らし坐す伊勢の大神、国作らしし出雲の大神を始め、 八百万の天神地祇(あまつかみくにつかみ)を遥かに拝(をろが)み奉りて謹み敬ひ恐み恐みも白(まを)さく、 去る弥生の十一日(とほあまりついたち)、東(あづま)の国また陸奥(みちのく)の国にて大いに地震(なゐふ)り海潮溢れて、数多の国民(おほみたから)に恐ろしき災禍(わざわい)降懸り、 為に命失ふ者夥しく、傷付き悩む者さらに多く、遠き外国(とつくに)の民も是の報せに恐れ慄き、 猶も地震りて迦具土の火の災禍、国民を脅かす事を聞けり。 故(かれ)、諸々の大神等に恐み恐みも乞ひ祈(の)み奉らくは、今し疾く出で立ちて国民を救ひ給へ。殊には、 天照し坐す大御神天照大日霊尊、その神明にて悩める民を照らし、また未だ見出されぬ傷付く民を顕かに見出させ給ひ、 国生み給ひし多賀の大神伊弉諾尊伊弉冉尊、くらげなす漂へる地を急ぎ固め成し給ひ、 大蛇を斬り、悩める民を救ひし熊野八坂の大神素戔嗚尊、民を守りまたその心を強め給ひてこの災禍に立ち向かわせ給ひ、 国を言向け和(やは)しし香取の大神経津主命、鹿島の大神武甕槌命、 また千曳の磐根引き給う諏訪の大神建御名方命等、その御稜威(みいつ)にて今しも地震ふる地を鎮め治め給ひ、 大海を知らす住吉大神、綿津見大神また宗像大神等、溢るる海潮を止め、いまだ海上に漂へる民あらば守り導き給ひ、 国を鎮め守り給ふ八幡香椎の大神誉田別尊、足仲彦尊、気長足姫尊、その大神徳(おほみのり)以て災禍に遭へる国民を守り恵み給ひ、 火を知らす愛宕秋葉の大神火結命、悶熱(あつか)ひ懊悩(なや)む迦具土の火を鎮め治めて恐るべき災ひを止め給ひ、 諸金を出だす南宮大明神金山彦命、人身を冒す金属(かね)の災禍を防ぎ給ひ、 天下作らしし大神大己貴命また少彦名命、荒れ果てし地を整え治むる人等を導き、また薬の業にて病める民を救い給ひ、 生活の業司り給ふ豊受大神また稲荷大神倉稲魂命、悩める人等を飢え渇く事なからしめ給ひ、 道知らす岐神なる猿田彦大神、災禍の地への道を疾く開き、救助(すくひ)の業に就ける数多の人等を導きて一人も多くの命を救わせ給ひ、 心直き学びの人を慈び給ふ天満天神菅原道真公、救助の業に労(いたづ)く人等に正しく明らかなる知恵を授け給ひ、 その外二十二社、各州一宮、総社、本宮、末社、式内式外諸々の天神地祇等、 災禍に遭へる人等またそれを助けむと望む諸人を見守り給ひ、 此度の千年に一度の大き災禍に国民が助け輔(あなな)ひて己が乖々(むきむき)有らしめず、 遠き外国より助けの為に来たりし人等と共に良き思ひと強き心と巧の業もて万の事に当たらしめ給ひ、 更なる災禍有らしめず、 病める人と悩める人等を夜の守り日の守りに守り恵み幸はへ給ひて、着物食物住処(すみか)に足らざる所あらしめず、 一時も早く豊かなる生活(すぎわい)に戻らしめ給ひ、 また甚だしき災禍蒙りし地を本の豊かなる地に還さしめ給ひ、 一日も早く国民総ての心を等しく穏(おだ)しく和らげ給へと、謹み敬ひ恐み恐みも乞ひ祈み奉らくと白す。 辞別(ことわ)きて白さく、御言掌る八重事代主大神、何卒わが祝り詞を大神等の御馬の耳弥高に聞え挙げしめ給へと白す。